日めくりプロ野球 9月

【9月11日】1997年(平9) 二の舞はゴメン!緒方孝市、今度は劇的アーチ!

[ 2010年9月1日 06:00 ]

 【広島7―6阪神】フェンスギリギリ。阪神・高波文一左翼手が捕球体勢に入ったかのように見えた。打球が夜空から落下してくる。ジャンプ一番高波が食らいついた。
 が、広島ベンチからの「いけーッ!」の叫び声に押されるように、打球はそのグラブをかすめることもなく、スタンドイン。一斉にカープナインが一塁側から飛び出した。広島―阪神25回戦の9回裏、3点差をひっくり返す劇的な一弾を放ったのは、広島の2番緒方孝市右翼手だ。

 シーズン17号の一発は逆転サヨナラ満塁本塁打。満塁とはいえすでに2死。追い込まれたチームを救ったが、ベースを回る時、ガッツポーズは出なかった。「何も考えていなかった。勝ったのか?これで勝ったのか?と思いながら興奮していた」という緒方。正直なところ、会心の当たりではなかった。打球は詰まっていたが緩やかに吹く風にも乗って狭い広島市民球場のレフトスタンド最前列に飛び込んだ。
 4点を追う展開。グランドスラムだけでは同点止まりだったが、併殺を焦った阪神が和田豊二塁手の一塁への悪送球で1点が入り、クライマックスに向かって着々と舞台が整っていった。そして2死満塁。打席にこの日1安打の緒方が入った。
 マウンド上は葛西稔投手。前日10日、緒方は葛西のストレートを打ち損じて試合終了。二の舞だけは踏みたくない。「借りを返さなきゃと思って…。打ち取られた真っ直ぐの軌道だけを頭に描いて待っていた」。定詰雅彦捕手の要求は外角の真っ直ぐ。緒方の注文どおりに来た137キロのボールはシュート回転して中に入った。フルスイングした打球は緒方のやり返したいという強い思いも乗り移ってスタンドまで届いた。
 「マンガみたいだねぇ。いやー、プロでやっていて初めて見たような気がするな」。完全に負け試合を勝った三村敏之監督も声が上ずっていた。三村監督が興奮するのも無理はない。広島のサヨナラ満塁本塁打は1970年9月23日に井上弘昭外野手が大洋25回戦(広島市民)で平松政次投手が放って以来、27年ぶり2人目だったが、これが「逆転」となると球団史上初。三村監督も見たことがないはずだった。「満塁ホームランは打ったことがあるけど、サヨナラっていうのはない。いやー、スゴイことしたなぁ」とだんだん喜びがこみ上げてきた緒方だった。
 緒方の一撃はプロ野球史上22本目のサヨナラ満塁弾だったが、一気に3点差をひっくり返したいわゆる「つり銭なし」の一発はセパ合わせて8発目。ただ2死まで追い込まれての一発は、82年5月23日、仙台宮城球場で大洋・長崎啓二外野手が中日・鈴木孝政投手から打って以来15年ぶり3本目という球史に残るホームランとなった。

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