日めくりプロ野球 9月

【9月10日】1990年(平2) 世界初!42歳で30発 門田博光 リーグ初の連発サヨナラ

[ 2010年9月1日 06:00 ]

 【オリックス5―4西武】きょうはもう終わり。そんな気がしていた。「3球目の甘いのを(バックネットへのファウルして)打てんかったでしょ。あれでたいてい勝負はついとるよ」。プロ21年目、オリックス・門田博光外野手だからこそ分かる経験則だった。
 しかし、5球目。もう1球甘い球が来た。西武・渡辺智男投手が投げた外角高めのカーブに対し素直にバットを出した打球は左翼へ。いい感じで舞い上がり風にも乗った打球は、西宮球場のラッキーゾーンへ落ちた。シーズン30号ソロ本塁打は、試合を決めるサヨナラ弾となった。

 42歳での30号は、日本では前人未到の大記録。米大リーグでも三冠王2回のスラッガー、レッドソックスのテッド・ウイリアムスが引退した年に放った29本が最高で、門田は世界新記録を樹立した。
 優勝目前のライオンズ相手に連夜のサヨナラ勝ち。しかも2試合ともゲームに終止符を打ったのは門田のバットだった。「2試合連続サヨナラ本塁打?記憶にないな。初めてだろう。でもきょうはしんどかった。きのうの試合で精根尽き果てたって感じ」と門田はダイヤモンドを周った後、絞り出すようにしてインタビューを答えた。
 門田が「精根尽き果てた」という試合は両軍合わせて11本塁打28安打が飛び交った。オリックスが3回まで4点リードも、8、9回に4点ずつを奪った西武が9回に11―7と逆転。逆に7、8回走者を一人も出せなかったオリックスに勝機はないと、観衆の多くがそう思うほど勢いの差ははっきりしていた。
 しかし“パンチ”こと佐藤和弘外野手の適時打で2点差に迫ると「パンチが打ったことでオレも続こうと…。勝てば上田(利治オリックス)監督が通算1000勝になると聞いていた。それなら何か絵になることを、と考えていた」と門田。見渡せばすべての塁は埋まっていた。1死満塁。絵になることといえば、1つしかなかった。
 カウント1―2。鹿取義隆投手が併殺狙いで投げたシュートを弾き返した打球はセンターの右へ。秋山幸二中堅手が背走するも、打球はその頭上を簡単に越えた。逆転サヨナラ満塁本塁打。生涯567本のアーチをかけた門田にとって、42歳になって初、生涯唯一の逆転グランドスラムは「久しぶりに鳥肌が立つほど興奮した」一撃だった。
 これだけの劇弾の次の日の一撃は確かに刺激に乏しかったが、世界新であると同時にこれまでセ・リーグで5人いた2試合連続サヨナラ本塁打をパ・リーグで初めて記録したホームランでもあった。
 オリックスの本拠地が神戸に移り、上田監督がブレーブスからブルーウェーブになるのを機に勇退したと同時に、門田は自分の最後の所属先を福岡に移転したホークスに求めた。職業野球の時代から半世紀以上にわたって名勝負の舞台となった西宮球場へ、そして南海時代に名勝負を演じてきた阪急ブレーブスへの惜別を込めたような鮮やかな2試合連続サヨナラ弾だった。
 

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