日めくりプロ野球 9月

【9月24日】2000年(平12) 54年ぶりの奇跡!長嶋監督、初めてドームで舞った

[ 2008年9月22日 06:00 ]

5度目のリーグ優勝を勝ち取った長嶋茂雄監督の胴上げ。試合に勝って監督として本拠地で胴上げされたのは、後楽園時代を通じ初めてのことだった
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【巨人5-4中日】さあ、これからだ!と言ったか言わぬうちに、ドラマはいきなりハッピーエンドを迎えた。巨人・江藤智三塁手の満塁本塁打の興奮が冷めやらぬ中、続く二岡智宏遊撃手が打った瞬間にガッツポーズ。打球はオレンジ一色の東京ドーム右翼席へ一直線に飛び込んだ。9回裏、一挙5点を奪った巨人は逆転サヨナラ勝ち。4年ぶりのセ・リーグ優勝を劇的な連続本塁打で勝ち取った。
 打球の着地点を見届けると笑顔がはじけ、高々と両手を上げた長嶋茂雄監督。顔を紅潮させ、コーチ陣、選手とだれ構わずハイタッチ。背番号3が子どものように何度も飛び跳ねた。

 二岡が生還し“殴る蹴る”の手荒い祝福を受けると、次はドームを埋め尽くした5万6000人の大歓声をBGMにミスターが5度宙に舞った。長嶋巨人のセ優勝は通算5度目だったが、試合に勝って東京ドームで胴上げされるのは初めてのことだった。
 数々の栄光、修羅場を越えてきた男もあまりにも突然に、あまりにも劇的にやってきた感動のシーンにしばらく時間が過ぎても足が震えていた。「もう言葉では言い表せないですね。本当に監督冥利に尽きる一瞬でした。やっばり野球というのは生きていますから」。甲高い声がいつも以上に上ずった。野球人生最高の胴上げを20世紀最後のシーズンに本拠地で味わえるなんて…。長嶋監督は超満員のスタンドをグルッと見回しながら帽子を片手に持ち、グルグルと大きく何度もファンに向かって振っていた。
 正直なところ、サヨナラVをもたらした二岡の一発もベースを1周する姿もほとんど見ていなかった。それほどサヨナラ劇はあっという間にやってきた。試合は9回表を終了し0-4。ひっくり返す雰囲気は、ここまで散発5安打のジャイアンツには全くと言っていいほどなかった。
 しかし、元木大介二塁手の右前打から3連打で満塁のチャンスを作ると、超重量打線が本領を発揮。ドミンゴ・マルティネス一塁手が三振した後、ここまで31本塁打の江藤が打席に入った。
 広島からFA移籍1年目。横浜に決まりかけていた話を断り、巨人入りしたことで“裏切り者”扱いされたこともあった。長嶋監督が付けていた33番を譲られたプレッシャーもあって前半戦は不振にあえいだ。体重は5キロも減り、抜け毛にも苦しんだ。
 その悩みぬいたスラッガーがカウント0-2から、中日の抑えエディー・ギャラード投手の147キロストレートをとらえ、左中間に起死回生のグランドスラムを放った。悩み苦しみ続けた日々がうそだったように江藤も長嶋監督同様、子どものように飛び跳ね笑った。「移籍1年目でこんなに嬉しいことになるとは…。巨人に来て良かった?この顔を見てください」。背番号33は胸を張った。
 そして二岡。江藤の満塁弾でドーム内が異様な雰囲気に包まれている中で、1人だけ冷静だった。「正直、狙ってました」と二岡。頭に血が上っているギャラードの真っ直ぐは力んだだけのキレのないボールだった。得意のライト打ち。二岡の打球が一番伸びる弾道だった。シーズン10号のソロアーチは10年前に同じ背番号7の大先輩、吉村禎章外野手が記録して以来の、“決まり手”がサヨナラ本塁打による優勝だった。入団2年目でサヨナラ弾は早くも4本という勝負強さ。一番の役者に“オイシイところ”が自然と回ってきたという感じだった。
 9回4点ビハインドを巨人が逆転した例は、1リーグ時代の1946年(昭21)7月28日の対パシフィック9回戦(西宮)以来、54年ぶり2度目。リーグ優勝が決まった試合でのサヨナラ勝ちは3度(当時)あったが、逆転サヨナラは初めて。ドラマチックな男・長嶋茂雄の20世紀をしめくくる、最高のクライマックスだった。

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