日めくりプロ野球 9月

【9月4日】1999年(平11) 「バカヤロー!」外野手5試合目の福留孝介、痛恨の落球

[ 2008年8月31日 06:00 ]

痛恨の落球で星野監督に怒鳴られた福留孝介。メジャーに行ってからもその守備には定評がある
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 【広島1-0中日】9回裏、二死一、二塁。力のない平凡な飛球が左翼へ上がった。バットをたたきつけて悔しがった広島・西山秀二捕手はもう打球を見なかった。中日・福留孝介左翼手がゆっくり落下点へ。これで延長戦、と思った瞬間、信じられない光景を1万5000人の観客は目の当たりにした。
 捕球態勢に入った福留の左腕が伸びたかと思うと、白球はグラブに当たって地面に落ちた。アウトカウントは2つ。当然各走者も打ったと同時にスタートを切っており、二塁走者の野村謙二郎遊撃手は外野で起こった出来事を半分信じられないといった表情でホームを踏んだ。

【3月13日】00年(平12) 絶対に振ってやる!カウント0-3から逆転満塁サヨナラ弾

 痛恨のサヨナラ落球。1点をめぐる攻防となった広島-中日23回戦(広島市民)は、誰もが予想し得ない幕切れで決着が付いた。最下位広島に中日は対戦成績9勝14敗となり、シーズンの負け越しが決定。球場のいたるところで盛り上がる広島ファンの歓声がいつもより大きかった。
 呆然とする福留。カバーのために近寄っていた関川浩一中堅手はその場で仰向けに倒れこみ、上空を見上げたまま動かなかった。ベンチの中日・星野仙一監督は苦笑しながら首をひねるや否や、今度は近くにあったバットケースを思い切り蹴って怒鳴った。「バカヤロー!」
 2位巨人が負け、11年ぶりの優勝へのマジックは「21」に減った。それでも怒鳴った星野監督は機嫌が悪い。番記者に囲まれると「点を取らなかったら勝てんわな。まるで消化試合みたいやった」とだけ言い残し、バスの中へ。何か虫が知らせたのか、試合前に仁村薫守備走塁コーチに「福留がエラーしないように、ちゃんとノックやっとけ」と指示していた指揮官だった。
 点を取ることにこだわった試合だった。山本昌投手を含め7人の左打者を並べて臨んだ一戦。前回完封負けを喫した天敵・佐々岡真司投手攻略のためのオーダーだった。しかし、一流投手には右も左も関係ない。9回まで散発5安打。7番に入ったルーキーの福留も投ゴロ、左飛、三振と佐々岡に翻弄された。
 左を無理やり並べたため、福留はこれまで4試合しか経験していない外野で出場した。1点もやれない9回、守備固めに大西崇之外野手らのスペシャリストを使うという選択肢もあったように思えるが「攻撃のことも考えないといけなかったから…」と島野育夫ヘッドコーチ。延長戦に入れば10回に福留に回ってくる。ここまで2割7分4厘、12本塁打。期待のルーキーとしてはまずまずの数字を残していたことで、ベンチは交代をためらったが、結果的にこれが致命傷となった。
 「情けないし、申し訳ない」と小さな声の福留。その後、倍くらい大きな声で思わず「チキショー!」。セ・リーグでは、1978年6月3日、神宮球場でのヤクルト-阪神7回戦で、阪神・植松精一左翼手が落として以来、21年ぶりのサヨナラ落球。福留はプロに入って初めて悔し涙を流した。
 その福留が外野手でコールデングラブ賞を受賞したのは02年。恥ずかしすぎるサヨナラ落球から3年が過ぎていた。以後、日本球界を離れる07年まで4回受賞。もともと肩に自信はあったが、すべてにおいてこれだけ上達した内野上がりの外野手はなかなか見当たらない。福留の努力、練習に付き合ったコーチ陣には頭が下がる。

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