日めくりプロ野球 8月

【8月30日】1995年(平7) 古田敦也“妨”走でゲームセット

[ 2010年8月1日 06:00 ]

 【横浜1―0ヤクルト】3万人の観衆は一瞬何が起こったか分からなかったに違いない。二塁ベース付近ではヤクルト側が渡田均二塁塁審に猛抗議。一転して目を三塁側ベンチ前に移すと、横浜・斎藤隆投手のヒーローインタビュー。試合が終わったのか、終わっていないのか、わけの分からない神宮球場での23回戦は最終回に問題のプレーがあった。
 9回、1点を追うヤクルトは1死一、二塁と一打サヨナラの好機を迎えた。完封ペースの斎藤を引きずりおろし、守護神・佐々木主浩投手が登板。6番真中満右翼手との勝負となった。

 カウント1―1からの3球目。打球は一塁へのゴロとなった。駒田徳広一塁手が二塁へ送球した。併殺打なら一気にゲームセット。一塁走者の古田敦也捕手はなんとかゲッツーだけは阻止しようと猛然とスライディングをした。
 が、それはスライディングというより、二塁ベースに入った進藤達哉遊撃手にタックルするようなものだった。しかも、アウトになった後も進藤の下半身に抱きつくようにその動きを止めようとした。
 進藤は二塁から三塁に進んだトーマス・オマリー一塁手をけん制しようと三塁を向いた時のことだった。渡田二塁塁審が古田の守備妨害を宣告。よって打者走者の真中もアウトとなり、ダブルプレーが成立。2死一、三塁で同点あるいは逆転のチャンスが続いたはずが一瞬にして試合終了となった。
 渡田塁審が適用したルールは野球規則の七・〇九(f)「アウトになったばかりの打者または走者が、味方の走者に対する野手の次の行動を阻止するか、あるいは妨げた場合は、その走者は味方のプレーヤーが相手の守備を妨害(インタフェア)したものとして、アウトを宣告される」だった。古田の守備妨害によって、本来ならアウトにもセーフにもなる可能性のあった真中もアウトになったのだ。
 判定に喜ぶ横浜ナインの間をヤクルト・野村克也監督以下、渡辺進、水谷新太郎両コーチがベンチを飛び出し、二塁付近へ駆け寄った。
 「なんで勝手に守備妨害と決めるんや。あれぐらいどこのチームもやっとるやないか!」激しい口調で詰め寄った野村監督に、渡田塁審はさらに説明を付け加える。「古田は二塁へ走っているときから、送球を邪魔するように斜めに走って、スライディングも正当とは認められず、故意性は明らか。一塁に投げて間に合ったかどうかは問題ではない」。
 判定が覆るわけでもなく、野村監督はさんざん嫌味を言った後、引き上げたがもちろん納得したわけではなかった。「こんなこと40年やってきて初めてや。審判の権限の乱用やで。連盟提訴?それで何か変わるんかい?何かしてくれるのか。これだけのファンの前で、こんなん幕切れはファン無視や。古田も悪いかもしれんが、いきなりではなく、注意でいいやないか」。
 2年ぶり優勝を目指すヤクルト。6ゲーム差をつけているとはいえ、残り試合が6試合多い2位広島の存在が不気味だった。なんとしても勝ちたいという執念が古田に好走と“妨”走の紙一重のプレーをさせたようだ。

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