日めくりプロ野球 8月

【8月29日】2008年(平20) 吉川元浩 苦節11年目の初本塁打は起死回生弾

[ 2010年8月1日 06:00 ]

 【ソフトバンク4―4西武】ソフトバンクの主砲・松中信彦内野手が12年かかって通算300号本塁打を放った日、11年かかって1軍で初本塁打を記録した選手がいた。
 ヤフードームでのソフトバンク―西武20回戦の延長11回裏、あと2人で西武の勝利というシーンで抑えのアレックス・グラマン投手から同点本塁打を放ったのは、ソフトバンクの代打吉川元浩内野手。首位西武のマジックナンバーがさらに減る直前に浴びせた強烈な一撃は、左翼席に飛び込んだ。

 「ようやく打てた。長かった。1軍でのホームランのうれしさは、2軍とは比べものにならない。いい場面で打てて本当にうれしいです」。ファームではイースタンとウエスタン合わせて100本塁打を数えた選手。ダイヤモンドを1周することは慣れていたが、1軍選手が試合をするドームでのナイターで、しかも約3万3000人の大観衆の前でものすごい歓声を受けたのは初の体険。もうベテランの域に達しようかという男が1本の本塁打に体が震えた。
 負け試合を引き分けに持ち込んだソフトバンク王貞治監督もひと振りでチームを救った吉川に賛辞を惜しまなかった。「何と言っても吉川が見事だった。あのプレッシャーのかかる場面で、よく1球で仕留めてくれたね」。
 王監督にとっても、自分の評価が間違っていなかったことを証明する一発だった。07年11月、ホークスの秋季キャンプ最終日。巨人から戦力外通告を受けた吉川が駆け込みで入団テストを行うことになった。急きょ決まった1日だけの入団試験。王監督の鋭い視線が降り注ぐ中、異常に緊張した。85スイング中、サク越えはわずか2本。イースタンの本塁打、打点王の片りんをアピールできなかったように感じた。
 だが、世界の本塁打王はその素質を見抜いていた。「遠くに飛ばす力はあるね。ひと皮むければ面白い」。バッティング投手の投げる球に詰まるなどもの足りなさはあったが、中日からFAした福留孝介外野手の獲得に失敗すると、大砲候補が欲しかったホークスは未完の大器の入団を決めた。
 育成枠での採用でも文句を言える立場ではなかった。プロで10年以上のキャリアを積んできた男が新たにもらった番号は122。97年に群馬・東京農大二高から近鉄にドラフト4位指名され入団した時は50番、それは02年に2対2のトレードで巨人に移ってからも同じだった。その倍以上の番号を付けて若手中心のファームに出場するのは正直なところ格好悪かった。
 それでも野球生命の危機から拾ってくれた王監督とホークスのピンチにバット1本で何とか貢献したいという思いだけで貴重な一発を放り込んだ。
 09年まで通算45試合で計15安打、2本塁打。当の昔に首を切られても仕方のない数字だが、13年目の2010年も現役。実力の片りんは見せつつも、王監督が言った「ひと皮むければ面白い」域までは達していないだけに、さらなる奮起を期待したい。
 

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