日めくりプロ野球 8月

【8月28日】1963年(昭38) 右に行ったり左に行ったり…柿本実、奇怪な行動に甲子園爆笑

[ 2010年8月1日 06:00 ]

 【阪神3―1中日】阪神のエース、村山実投手は完全に苛立っていた。フルカウントから鬼の形相で投げた外角のストレートで三振に仕留めると、打者をにらみつけたまま一塁側ベンチへと歩を進めた。
 甲子園での阪神―中日18回戦の2回、中日は2死満塁の好機をつかんだが、打者は投手の柿本実。ここまで15勝をマークしたサイドスローもバッティングはからきし自信なし。右肩痛などで出遅れたとはいえ、夏場から調子を上げてきた村山から得点するのは難しい。杉浦清監督は苦肉の策で何とか1点を取ろうと一計を案じた。

 初球は外角高めに外れボール。すると柿本は稲田球審にタイムを求めると、右打席から左打席へと移った。村山があ然としていると、プレイがかかり、村山はムッとしながら2球目を投げた。
 カウントは1―2となった。柿本は打席を外すと、稲田球審の後ろを通ってまた右打席に“復帰”。甲子園の観衆からドッと笑いが起こった。真剣勝負をしている村山は笑えない。力んだ村山の4球目は大きく外れカウント1―3に。すると、柿本はまた左打席へと移動してしまった。
 「ええ加減にせえ!」と阪神ファンは怒声を発し、中日ファンはなおも笑い転げるばかり。村山は三塁側ベンチと三塁コーチスボックスの杉浦監督に対し露骨に不快な表情を浮かべた。が、そこはエース。中日の作戦が完全に四球狙いと分かると、冷静になれた。5球目はインコースへズバッと直球を投げ込みフルカウントに持ち込んだ。
 ファンはもう先をお見通しだ。背番号45が右打席に戻る前からもう球場中は野次と笑い声の渦に。案の定、4度目の移動で右打席に立った柿本。6球目、今までで一番速いストレートを村山は投げ込み、柿本はまったく手が出ず三振。満塁で得点は入らなかった。
 「とにかく投げにくかった。途中力んでしまって苦しかったが、あんな奇策にはまりたくなかった。本当に疲れた」と村山。藤本定義監督は中日の戦法を「姑息」とまで言い切り「四球や失策を狙ったり期待するのは草野球がやること。レベルが低い」と酷評した。
 一方の中日。「監督の出すサインが“そうせい”というからそうしたまで。そりゃあ、格好いいものじゃないよ」と、球界屈指の強気な男、柿本も恥ずかしい思いをしたとばかり、多くを語らなかった。杉浦監督は「村山をかく乱しようとしたんだが…さすが最高の投手。この程度じゃ崩れない」と脱帽した。
 

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