日めくりプロ野球 8月

【8月22日】1981年(昭56) アレっ、先発で4回途中KOなのに…杉本正、特例の白星

[ 2009年8月1日 06:00 ]

通算81勝を挙げた杉本。遊びの師匠は東尾修投手で数々の伝説が球界には残っている。投手コーチとしての手腕は高く評価されており、09年は横浜のコーチに就任
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 【西武5-4南海】5点リード。あと2人で勝利投手の権利を得るはずだった新人左腕は、余計な2四死球とバント安打でピンチを招くと、西武・根本陸夫監督の逆りんに触れマウンドから降ろされた。
 白星から遠ざかって45日。新潟・上越の三塁側ベンチの隅で杉本正投手は、頭からタオルをかぶりうなだれるしかなかった。さらに事態は悪い方へ。自分がまいたピンチの種をリリーフした松沼雅之投手が刈り取ることができず、南海の4番門田博光外野手に満塁本塁打を浴びたことで1点差に。試合前から降り出した雨が次第に強くなる中、西武はこの日の勝利さえもおぼつかなくなった。

 薄氷を踏む思いのライオンズベンチだったが、天が味方してくれた。試合は6回表を終了したところで降雨コールドゲーム。「裏の攻撃までやるのが常識。審判団は西武に雇われているのか!」と怒り心頭の南海ドン・ブレイザー監督の抗議も受け入れられず、西武は流れが相手に行きかけた試合を“勝ち逃げ”した。
 ところで勝利投手は誰になるのか?先発投手が勝利投手の権利を得るには、5回を投げきらなければならない。杉本は4回3分の1で交代したため、勝ち投手にはなれないはずだった。しかし、野球規則には6回の表裏まで試合が進まなかった場合の“特例”が規定されていた。
 野球規則10・17「勝利投手・敗戦投手の決定」のb項に即して、馬場球審が説明した。「勝利投手を決定するのに、先発投手は少なくとも5回の投球が必要であるという規則は、6回以上の試合に用される。試合が5回で終了した場合には、先発投手は最少4回完投して退いたこと、しかもそのとき自チームがリードの状態あって途中タイまたはビハインドになることなく、そのリードが試合の最後まで持続されたこと、などの条件がそろったときはじめて、勝利投手の記録が与えられる」。
 杉本はまさにこの条件にピタリと合い、久々の6勝目が転がり込んだ。グランドスラムを打たれた松沼弟にもセーブが付くという不思議な記録が残った試合だったが、やはり投手は勝ち星が付いてナンボ。杉本の表情がパッと明るくなった。
 「せっかく無得点で抑えてきたのに、交代を言われたときは目の前が真っ暗になった。でも、こんなことってあるんですね。たまにはいいじゃないですか」と、ベンチで頭を抱えていた人物と同一とは思えないほど晴れ晴れとした笑顔だった。4月7日の対日本ハム1回戦(後楽園)でプロ初登板初勝利を史上18人目の完封で飾ったルーキーは、実力だけでなく、運も兼ね備えていたのだった。

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