日めくりプロ野球 8月

【8月10日】1996年(平8) 大野雄次、プロ最後のアーチは球界初シーズン2本の逆転満塁弾

[ 2008年8月3日 06:00 ]

代打逆転満塁本塁打を放ち、一塁を回ったところで、ジャンプして喜ぶヤクルト・大野雄次。これが現役最後の27本目のアーチだった
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 【ヤクルト8-6広島】前日と同じシーンで続けて失敗するわけにはいかない。2点差の8回二死満塁。ヤクルトの代打、大野雄次内野手は必死だった。
 気持ちが空回りした。広島のリリーフ・山内泰幸投手のストレートに2球続けて空振り。全くタイミングが合っていなかった。カウント2-1になって一度打席を外した。「真っ直ぐは合わんなあ。変化球来ないかなあ」。そう思いつつ、バットの握りを短くした。山内のストレートに対応するためだ。野村克也監督が初めて膝を乗り出した。「謙虚になったな」。指揮官は予感した。

 広島バッテリーはなぜか、合っていない直球で押さなかった。4球目は129キロのスライダー。バットの芯は外れていたが、短く持った分コンパクトに振り抜けた。「打球を見るのが怖かった。一塁の渡辺(進)コーチを見たら“入ったぁー”って言っているから、ジャンプしちゃった。オレもまだあんなに飛べるんだなあ。着地するのが怖かったよ」。
 土壇場に飛び出した、大野の左翼スタンドに入る4号逆転満塁本塁打。前日8月9日の広島19回戦(神宮)。9回1死満塁の場面で大野は代打で起用されたが、佐々岡真司投手の前に空振り三振に倒れた。チームはサヨナラ勝ちを収めたが、素直に喜べなかった。

 しかし、きょうは違う。「実はきのうの試合の後、息子(10)励まされたんだ」という大野。試合を観戦していたリトルリーグで野球を始めたばかりの長男に「僕だって三振するんだから大丈夫だよ」と慰められたという。愛息の激励に応えた一発で、ルーキーの石井弘寿投手にも初勝利をプレゼント。35歳のベテランは終始多弁だった。
 シーズン4本塁打中、2本が代打逆転グランドスラムだった。1本目は4月16日の阪神1回戦(甲子園)、2-4で迎えた9回、左腕の古溝克之投手から放った。思えばこの時もバットいつもより半握り短く持っての一発だった。
 過去シーズン2本の代打満塁本塁打は、71年のロッテ・江藤慎一外野手、76年の近鉄・佐藤竹秀外野手と2人いたが、セ・リーグでは初めて。しかも2本とも逆転というのは、大野が球界初だった。
 86年、ドラフト4位で大洋に指名され、川鉄千葉から入団。千葉・君津商高から専修大に進んだが「水に合わない」と社会人へ。そんな経歴が当時中日の落合博満内野手と似ていた。ノンプロ通算50本塁打の実績から、田代富雄内野手以来、ホエールズにとっては久々の和製大砲として歓迎された。
 ところが、毎年オープン戦までしか結果が残せず、子連れでプロの世界に入った大野はシーズンでは1、2軍を行ったり来たりの“エレベーター”選手に。大洋の5年間で15本塁打しか打てず、92年には鴻野淳基内野手とのトレードで巨人入り。93年オフに自由契約となり、野村監督が目をつけスワローズに入り、野村がヤクルトを去った98年に自らも引退した。
 引退後はうなぎと牛タンの料理店を経営。プロ12年で27本塁打。その最後の27本目がプロ野球初のシーズン2本目のこの代打逆転満塁弾だった。

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