日めくりプロ野球 8月

【8月7日】2000年(平12) 「代打、松坂大輔」四半世紀ぶりの安打と初の打点2

[ 2008年8月2日 06:00 ]

代打で登場した西武・松坂大輔(左)は中前2点適時打を放ち、苫篠コーチと握手
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 【西武8-3オリックス】西武・東尾修監督がやや笑みをたたえながら、三塁側ベンチから出てきた。打順は9番のデニー投手。DH制のパ・リーグで投手が打順に組み込まれているのもおかしな話だが、東尾監督はもっと驚くべきことを林忠良球審に告げた。「ピンチヒッター、松坂」。
 オリックス-西武19回戦(神戸)。6-3で西武リードの9回表二死満塁。代打に起用されたのは、松坂大輔投手だった。西武は16人の野手全員を使い果たしていた。差は3点。決して安全圏とは言えない。満塁のチャンスにバッティングのいい投手を使うしかなかった。

 「松坂か青木勇人のどちらかと考えていた。松坂の方が名前的に脅かしが効くと思った。はじめは打つなと言っておいたけど、追い込まれて外に来たらバットを振ってもいいとサインを変えた」と東尾監督。「ロッカーでのんびにしてたら呼ばれちゃいました」と松坂は言ったが、もう一人の代打候補だった、青木がベンチ裏に行くと「大輔はもう手袋をはめていた」。
 中島聡捕手のバットを借りて、真新しいヘルメットを被り、3度ほど素振りをすると打席へ。マウンド上の栗山聡投手は嫌そうな顔をした。
 力んでいるのがはっきりわかった。4球ただ立っていると、カウントは1-3に。ベンチから「手を出してもいいよ」のサインが出た。5球目、139キロの外角のストレート。打球はバックネットへのファウル。フルスイングに1万6000人の観客は大いに沸いた。6球目は141キロ。これもファウルにした。
 9回二死満塁、カウント2-3。7球目は真ん中にきた。強振すると打球は栗山の足元を抜け、センター前に転がった。2人の走者が相次いで生還。西武はダメ押しとなる2点を松坂のバットで追加点を挙げた。
 一塁ベースに立って、苫篠誠治コーチとがっちり握手。これにはオリックスファンまで笑うしかなく、代走にもう一人の交代要員青木が告げられると、大拍手の中三塁ベンチに戻った。
 やられた栗山はベンチに帰ると、グラブを投げつけた。その目は悔しさと情けなさで真っ赤。無言でロッカールームに消えた。さすがの仰木彬監督も投手の代打にダメ押し打を打たれ不愉快そのもの。「一番打つ投手は松坂。実利とショーを兼ねた起用だろ。さあ、もういいだろ」とさっさと報道陣の前から姿を消した。
 パ・リーグでDH制が採用されてから、打席に立った投手は松坂で29度目。大半が日本シリーズで打席に立つことが必要となる投手への場慣れとして、バッターボックスに入ることが多かった。ヒットは4例あるが、代打安打となると、75年9月2日、阪急の山田久志投手が日本ハム後期9回戦(西京極)で皆川康夫投手を強襲する内野安打を放って以来、25年ぶり。しかも打点2となると初めてだった。
 投げるだけでなく、バッティングも非凡だった高校時代の松坂の活躍を知る人にとっては、この日のヒットも大した驚きではなかった。松坂の横浜高時代の公式戦での打撃成績は、打率3割9分4厘、6本塁打48打点。好投手は打撃も一流というが、その言葉通りの代打ヒットだった。

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