日めくりプロ野球 2012年7月

【7月23日】1982年(昭57) 1軍未経験ですが…金村義明 “球宴”史上初のサイクル安打

[ 2012年7月23日 06:00 ]

 【全ウ6―1全イ】前夜のすっぽん料理が効いたのか、それとも移動の新幹線で食べたうなぎ、いや横浜スタジアムで試合前に口にしたチキンライスか…。はたまた、南海・香川伸行捕手の借り物のスパイクにご利益があったのか、試合前に譲り受けた、広島・斉藤浩行内野手のバットに魔法をかけたのか…。ジュニアオールスター戦で近鉄のドラフト1位ルーキー、金村義明三塁手が、なんとサイクル安打を達成した。

 当時としては1軍のオールスター戦でも達成した選手がいなかった記録。それを1軍にまだ出場したこともない、19歳の高卒新人が難なくやってのけた。

試合前日の22日に後援者の誘いで、すっぽん料理を食べた金村。試合当日に関西から移動する際にもうなぎ弁当を食べ、その後球場でも大盛りのチキンライス。同行した近鉄のマネジャーが「いい加減にしとけ」とあきれるほどだったが、食べる選手は大成するというこの世界の伝説通りの記録を残した。

 「6番・三塁」でスタメン。まずは2回無死一、二塁で大洋・右田一彦投手から左中間へ先制の二塁打。序盤から賞金100万円のMVP候補に名前が挙がった。

 続く2打席目は4回。先頭打者として登場した金村は1年前、夏の甲子園準決勝で激突した名古屋電気高(現愛工大名電高)のエースだった工藤公康投手(西武)と“再会”した。甲子園でも3安打し、兵庫・報徳学園高の決勝進出に貢献し、初優勝に導いたが、プロでの初対戦も金村に軍配が上がった。

 中越え三塁打を放ち、悠然とベース上に立った。。「フルカウントなら決め球のカーブが来ると思って待ってた。その通り。工藤の攻略法はよく知ってます」。すでに1軍で登板している左腕に強烈な一撃を食らわせた金村はしてやったりだった。

 一番難しい1本が出ると、その気になるもの。「ひょっとした、やっちゃうかも」と思いつつ打席に入った5回2死二塁。カウント2―1と追い込まれながらも、日本ハム・萩原修投手から左翼スタンドに飛び込む2点本塁打をかっ飛ばした。

 そして7回2死二塁。ノッている男は初球から積極的にバットを出し、ヤクルト・鈴木正投手から中前適時打。これでサイクルヒットというパズルのピースが全てそろった。

 9回、ロッテ・中居謹蔵投手からは三振を喫したが、それでも4安打5打点なら間違いなくMVP。賞金100万円に加え、サイクルヒットの特別賞30万円もゲット。これに勝利打点、本塁打、三塁打のそれぞれ3万円の賞金もおまけのように付いてきて計139万円。「姉に赤ちゃんができたので、おじいちゃん、おばあちゃんになる両親に銀婚式の旅行代にでも」と親孝行な発言をした金村だが、賞金以上に「早く1軍でヒットを打ちたい」と、ここが俺の活躍の場ではない、と言いたげだった。

 金村は86年7月17日、阪急12回戦(西宮)でもサイクル安打を記録。2軍とはいえ、球宴と公式戦で達成したのは、後にも先にも金村のみ。通算安打数は939本だが、記憶にも“記録に残る”選手だった。

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