日めくりプロ野球 2012年4月

【4月2日】2004年(平16) 落合中日デビュー戦 誰も予想できなかった先発川崎憲次郎

[ 2012年4月2日 06:00 ]

落合中日の初戦となる開幕戦に先発した川崎
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 【中日8―6広島】ナゴヤドームを訪れた3万7000人の観衆はもちろん、中日の関係者でさえ、この日のスターティングメンバーを見た瞬間、我が目を疑ったに違いない。

 広島とのシーズン開幕戦の先発投手は、川崎憲次郎投手。2000年オフにヤクルトから中日にFA移籍も、右肩痛のために3年間1軍登板なし。04年のキャンプからはブルペンでも投げられるようになり、実戦にも登板したが、かつての速球と“カミソリシュート”と呼ばれた伝家の宝刀は、全盛期のそれには程遠かった。そんな右腕が開幕投手を、新任の落合博満監督が大事な一戦に投入した。

 “オレ流”のパフォーマンス、奇襲、単にウケを狙った…好意的にとらえるマスコミ、解説者は皆無。元中日監督の星野仙一・阪神シニアディレクターは「中日の地元ファンに失礼」と激怒した。

 落合監督いわく、川崎の開幕登板はなんと年明け早々の「1月3日に決めた」。直々に川崎に電話し「開幕はお前で行く。これは俺とお前しか知らない」と告げた。体が震えた川崎はその日から3カ月、誰にも言えぬまま試合当日を迎えた。

 1回2/3で5安打3四死球5失点。川崎の4年ぶりの1軍登板は目を覆うばかりの内容だった。ある程度この結果は見えていたにもかかわらず、落合監督はなぜ川崎に、自身の監督生活の始まりとなる開幕戦を託したのか。

 「このチームが変わるために、3年間必死にもがき苦しんできた男の背中を押してやることが必要だ」。落合監督は川崎起用の意図をそう説明した。ケガからの復活へ懸命に努力しているチームメートの姿を開幕戦という、一番気が張り詰めた舞台で見せることは、野球ができる幸せ、野球ができないことの辛さをナインに感じてもらうのに一番の手本となると指揮官は考えた。

 当たり前のようにやっていた野球がケガや衰えでいつかできなくなると頭で分かっていても、選手は普段そんなに意識はしない。それを川崎の投げる姿から、感じ取ってもらい、1試合、1球の重さを認識しながらプレーしろ、ということを実感してほしかった。毎年Aクラスには顔を出すものの、時々しか優勝しない中日が常勝軍団になるために、この意識が欠けていると判断しての川崎先発だった。

 中日は5点差をひっくり返し、白星スタートとなった。開幕戦での5点差逆転勝ちは、セ・リーグ史上初。同時に8年間で公式戦629勝を挙げた、落合監督の記念すべき初勝利でもあった。

 選手会長、井端弘和遊撃手は言った。「あの試合、川崎さんの姿を見て胸が熱くなった。あきらめないことの大切さも個人としてだけでなく、チームとして知った。逆転勝ちはその結果」。

 ダークホース的存在だった中日は5年ぶりにリーグ優勝した。落合ドラゴンズは以後、リーグ優勝4回、初の連覇を達成するなど、球団史上に類を見ない黄金期を迎えた。

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