日めくりプロ野球 2011年10月

【10月24日】1985年(昭60) 三冠王バース 王貞治の記録に並べず 怒りの中前打

[ 2011年10月23日 06:00 ]

 【阪神10―2巨人】無理やりだった。飛びつくようにして外角高めのボール球に手を出した阪神のランディ・バース一塁手の打球はセンターへと抜けていった。左翼スタンドに陣取ったタイガースファンは、まるでバースがサヨナラ打を打ったかのように大歓声を上げた。こうでもしなければやってられない。ヒットを打ったバースのいら立ちが、一塁ベースから伝わってくるようだった。

 85年のセ・リーグ公式戦のラストゲーム。その8日前に阪神は21年ぶりのリーグ優勝を決め、巨人も3位が確定。いわば消化試合だったが、バースには大記録がかかっていた。

 この年、打率3割5分、54本塁打、134打点で三冠王に輝いた。セ・リーグでは74年の巨人・王貞治一塁手以来、11年ぶりの快挙。セの外国人選手としても初めてのことだった。ここで問題になったのは本塁打数。あと1本打てば、阪神が優勝した64年(昭39)に王が記録した、年間55本塁打に並ぶプロ野球タイのメモリアルになるところだった。

 巨人バッテリーとしては、目の前でボスの記録にバースに追いつかれるのは、やはり気分がよくない。巨人バッテリーが渋々取ったのが敬遠策だった。1打席目から2打席続けてストライクなしの、連続ストレートの四球。先発斎藤雅樹投手のボールは、すべて外角に大きく外れた。

 「打たれないように外角の厳しいとみろを突いたら、たまたま四球になっただけ。王監督からの指令?それはなかった」と斎藤。かなり白々しくも聞こえたが、球を受けた笹本信二捕手も指示はなかったとしたが、最後にポロっと本音が出た。「監督が築いて、守ってきた記録だからね」。半ば暗黙の了解だった。

 「最終戦が巨人戦と決まった時から、記録は届かないと思った」というバース。が、あまりにも露骨なやり方に、気を静めるのが大変だった。そこで3打席目、ボール球にもバットを振った。こうでもしないと、モヤモヤを抱えたまま、西武との日本シリーズを迎えなければならないような気がした。

 バースの“反抗”はここで終わった。残りの2打席も四球で歩かされた。「悪い球を打ちにいって、バッティングフォームを崩してしまったらシリーズに影響する」とどこまでも冷静だった。

 日本記録は逃したが、フォームを崩すどころか、シリーズではますますバースのバットが炸裂。打率3割6分8厘、3本塁打、9打点で見事シリーズMVPに。阪神を初の日本一に導いた。

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