日めくりプロ野球 2011年8月

【8月12日】1982年(昭57) やっぱりパ・リーグ最高!移籍の高橋直樹“最少”2つで完封

[ 2011年8月12日 06:00 ]

 【西武1―0ロッテ】こんなに気持ちのいい勝利はいつ以来のことだろう。そんなことを考えながら、37歳のベテラン投手はバスタオルで汗をぬぐった。

 西武の高橋直樹投手はロッテ後期6回戦(西武)に先発、2安打完封勝利を収めた。「不思議とパ・リーグで投げると落ち着く。大きく投球を変えたわけではないけど、強いて言えばシンカーを多く使うようになったかな」と高橋。投球数はシーズンリーグ最少のわずか89球。試合時間も最短の2時間3分で終わった。

 相手の仁科時成投手も5安打で完投したが、負け投手という高橋と天と地ほどの差になったのは、高橋が落合博満三塁手の内野安打とレロン・リーの二塁打による2安打で三塁を踏ませず無失点だったのに対し、仁科はこの日唯一の失投ともいえる6回のスティーブ三塁手への1球を右翼スタンドまで運ばれたこと。最少得点を守り切り、高橋はこれで4勝目となった。

 女房役の黒田正宏捕手が興奮気味に口を開いた。「プロで12年メシを食っているが、南海時代を含めて1―0のゲームでマスクをかぶったのは3試合目。毎回シビれるが、きょうほど受けていて面白い日はなかったね」。

 黒田はさらに言う。「89球中、オレがミットを構えた位置と違ったところにボールが来たのはたった3球。あとはドンピシャ」。これなら捕手も気分がいい。

 西武初優勝の切り札として、広島でくすぶっていたアンダーハンドを、根本陸夫管理部長がかつて監督を務めたカープのフロントと話をつけ、古沢憲司投手、大原徹也内野手との1対2のトレードをまとめたのが6月8日。「セ・リーグの水が合わないだけ。水槽を変えれば、必ず再生する」と見込んで、かつて日本ハムのエースだった男を“お買い得”の今獲得しなければと短期間で交渉をまとめた。

 江夏豊投手との大物トレードで広島入りしたものの、わずか2勝に終わっていた81年のシーズン。再起をかけた82年も開幕こそ1軍だったが、わずか3試合の中継ぎ登板後、ファーム行き。そこでも若手中心の起用で、同じくベテランの渡辺秀武投手とともに出番はなかった。

 このままプロ野球選手としての生活を終えてしまうのか…。強かった70年代の阪急から計39勝をマークするなど、通算140勝を挙げた右腕は怖さにも似た寂しさを感じていた。そこへ舞い込んだトレードの話。高橋は小躍りして喜んだ。「セ・リーグの打者は甘い球ばかりを待って、ウイニングショットに挑んでくる力勝負をしない。パ・リーグの野球の方がオレの性に合う」。

 復帰したパ・リーグで途中参加ながら7勝をマーク。根本管理部長の見立て通り、新生ライオンズの初優勝に貢献した。根本の目のつけどころがものを言った、地味だが最高傑作のトレードの1つといえる。

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