日めくりプロ野球 2011年8月

【8月11日】1996年(平8) 立たされたり丸刈りにされたり…野口茂樹 6勝目は大記録

[ 2011年8月11日 06:00 ]

ノーヒットノーランを達成し、矢野輝弘捕手(右)に祝福される野口

 【中日5―0巨人】巨人の代打、岸川勝也外野手の打球が遊ゴロになった瞬間からの記憶はあまり覚えていない。やたらと握手を求められ、誰にやられたか思い出せないほど頭をたたかれ、口々に「おめでとう」と言われた。

 中日の野口茂樹投手は巨人19回戦(東京ドーム)で、6四球を出しながらも無安打投球でプロ野球64人目(75度目)のノーヒットノーランを達成した。投球数133球、奪三振7、内野ゴロ11、内野飛球3、外野飛球3。セ・リーグで6四球を出して、無安打無得点試合を達成したのは初めてのことだった。

 プロ4年の野口は、ここまで通算5勝。これが対巨人戦初勝利だった。「巨人戦の初勝利がこんな記録につながるなんて信じられない。自分じゃないみたい」と殺到した報道陣に目を丸くした。確かに数カ月前の左腕のままだったら、あり得ない大記録だった。

 3年目で1軍30試合に登板し、3勝をマークしたが、負け数は10を数えた。最速145キロの真っ直ぐに、独特の軌道を描くカーブという大きな武器を持っているのにもかかわらず、特長を生かしきれず四球で自滅するケースが目立った。KOされても悔しがるでもなく、ベテラン投手のように敗因を淡々と分析する姿に「若さがない」と眉をひそめるコーチもいた。口の悪いチームメートの中には「責任感のない、勝手気ままなミスター・フォアボール」とまで言った。

 元々ガツガツ何かをやるような負けず嫌いの性格ではなかった。愛媛の中学時代からその才能を見込んだ、甲子園常連校などから声がかかるも「変な競争をするのは嫌」とすべて断り、地元の丹原高に進学。伸び伸び高校野球ができたお陰で“四国のドクターK”とまで呼ばれたが、のんびり屋の性格はプロ入り後も変わらなかった。

 そんな野口を何とか一本立ちさせようと、愛のムチで厳しく接したのが星野仙一監督だった。3月、オープン戦で不甲斐ない投球で降板すると「そこにずっと立っとけ!」と怒鳴られ、ベンチで試合終了までの2時間以上立たされた。

 5月2日、開幕から1カ月経っても先発ローテーションで結果が出ない野口に2軍降格だけでなく、丸刈りまで命じられた。まるで高校生を相手にしているかのような星野監督だったが、大人になりきっていない左腕に少しでも何かを感じてもらえればという星野流のやり方だった。
 
 「立たせたり、丸刈りにしたことも無駄じゃなかったようだな。きょうは本当に嬉しいよ」と星野監督。佐藤球団社長はボーナス100万円をその場で決定した。

 あれから15年。リーグMVPも最優秀防御率も受賞した左腕は、今も現役投手として、四国アイランドリーグplusの三重でマウンドに立っている。

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