日めくりプロ野球 2011年8月

【8月9日】1989年(平元) 復活!クロマティ 打率4割!

[ 2011年8月9日 06:00 ]

一時は打率4割の夢を抱かせた巨人・クロマティ
Photo By スポニチ

 【巨人3―0広島】ストレートを素直に弾き返した当たりは、センター前にきれいに抜けていった。東京ドームの巨人―広島19回戦の5回2死二塁、巨人の4番ウォーレン・クロマティ中堅手は広島の先発、川口和久投手から中前適時打を放った。

 クロマティにとってこの日2本目の安打。シーズン128安打目のヒットで打率はなんと4割に達した。

 「6月の途中まで4割を打っていたんだから、別に騒ぐこともないだろに。川口はいい投手だ。僕は苦手な投手の一人だから2本打てたのは嬉しい」。本人はそう言うが、これが騒ぐほどの記録だった。

 巨人はこの広島戦でシーズン89試合目。規定打席に到達している選手で89試合目までで、打率4割の大台をキープしたのは1964年(昭39)の南海・広瀬叔功外野手以来のこと。広瀬は開幕からの連続記録だったが、クロマティのそれは一度3割台に落ちてから“復活”してのもの。夏場に入り、調子を再度上げた夏男の本領発揮だった。

 これだけヒットを量産するには理由があった。セ・リーグ各球団のクロマティへの攻めは、内角のストレートを見せ球にして、外角の変化球、とりわけストライクゾーンからボールに逃げていく球で打ち取っていた。89年は決め球に使っていた外の変化球を逆に狙い打ってヒットにしたり、ボールになる球はファウルにするか悠然と見送っていた。

 これができるようになったのは、バッティングフォームの修正の成果だった。独特のクラウチング打法から、以前より背筋を伸ばすようになり、重心を高くして変化球の見極めが出来るようにした。加えて狙った変化球を強振せず、ミートポイントを後ろにして球を引きつけ、逆らわずにセンターから左へ打ち返した。

 「どうせホームランになるような甘い球はあまり来ないのだから、来た球を素直に打ち返すようにした。ホームランを打ってもシングルヒットでも打率は変わらない」と考え方の変化もあった。

 89年限りで野球界から引退すると公言していた。その集大成の意味もあって、日本球界ではまだやったことがない、大リーグでも半世紀近く出現していない4割打者を照準にシーズンイン。一部では引退宣言をしておきながら、4割を打てば再契約を持ち出してくるはずの巨人との交渉を優位に進めるための最大の武器にするという意図があるとも噂された。当時のクロマティは夫人との離婚調停中でもあり、金に忙しい時期だった。

 8月20日の阪神21回戦(東京ドーム)で、年間の規定打席数403に達し、打率は4割1厘。極端な話、残り試合をすべて欠場したら、日本球界初の4割打者として名を残すことができるところまできた。

 翌日打率が4割を割り、その後二度と復活することなく、最終的に3割7分8厘でシーズン終了。首位打者は獲得したが、当時の日本記録だった、ランディ・バース一塁手(阪神)の3割8分9厘を上回ることも出来なかった。

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