日めくりプロ野球 2011年8月

【8月7日】1974年(昭49) とにかく一人舞台 ケキッチ本業は不安も“副業”で大暴れ

[ 2011年8月7日 06:00 ]

 【日本ハム6―3近鉄】日本ハム・中西太監督は、何とも複雑な心境だった。

 後半戦反抗の切り札として、6月に急きょ獲得した、ヤンキースなどでメジャー34勝を挙げた右腕、マイク・ケキッチ投手は静岡草薙球場での近鉄後期5回戦で5安打3失点で完投。4勝目をマークしたが、許した四球はなんと10個。当時のパ・リーグタイ記録となるノーコンぶりだった。
 「困ったなあ。たまたま勝ったけど、むちゃくちゃやなあ」と中西監督。コントロールは決していいとはいえなかった上に、日本の球審のストライクゾーンにも戸惑いを見せていたこともあってのタイ記録。本人はその“問題”に触れたくなかったのか、試合終了後に番記者に指摘されると「ウソだろ?スコアブックを見せてくれ」と、シートを覗き込んだ。

 指で数え10個だったことが分かると、「オーノー!なんて投球をしてしまったんだ」と大げさに嘆いてみせた。「守っているチームメートに迷惑をかけた。ダブルヘッダーで疲れているのに申し訳ない」と首をすくめた。

 その責任をせめてバットで、というつもりはなかっただろうが、チームに勝利をもたらしたのは、ケキッチの打撃だった。

 3―3の同点で迎えた4回1死二、三塁で近鉄・加藤英夫投手の外角高めの完全にボールを重さ1キロ超のバットでたたき、右中間のフェンス直撃の2点二塁打。塁上で笑顔を見せ、ファイターズベンチに向かってガッツポーズをしてご機嫌だった。

 話は続く。6回、走者二塁で打席が回ってきた。今度はストレートをミートして中前に弾き返した。2安打3打点。それも勝利をもたらす貴重な打点。「バッティングは好きだね。投手がダメになったら、外野手か一塁でボスに使ってもらうよ」とジョークまで飛び出した。

 来日からこれで打撃成績は23打数9安打6打点、打率3割9分1厘。チームの顔、張本勲外野手が舌を巻いた。「すげぇ助っ人さんだぜ。本職のピッチングより打撃の方が全然いい。球団は獲り方を間違えたんじゃないか」。

 張本の言葉は当たっていた。ケキッチは74年の後期のみで退団。投手成績は18試合で5勝11敗、防御率4・13だったが、打撃は代打で登場したこともあり、24試合で19安打を放ち、1本塁打8打点を記録。打率は3割5分2厘を記録した。規定打席には全然足りないが、パ・リーグのこの年の首位打者、チームメートの張本の3割4分よりも高かった。

 退団後は打者に転向せず、メジャーに復帰。3年間で5勝をマークし引退した。
 

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