日めくりプロ野球 2011年7月

【7月29日】1998年(平10) 好投に男気で応えた!石井浩郎 38年ぶりの劇弾!

[ 2011年7月29日 06:00 ]

満塁本塁打を放ちナインとハイタッチする石井(左)

 【巨人4―0ヤクルト】ものすごい集中力が生んだ一発だった。

 両軍無得点で延長戦に入った、ヤクルト―巨人の22回戦(神宮)。巨人は延長10回、1死満塁の好機で代打・石井浩郎内野手が体勢を崩しながらも、左翼席へ白球を運んだ。自身4本目となるグランドスラム。この一戦に敗れると、貯金はゼロになるところだった巨人。両腿と左手首に故障を抱えるスラッガーが、ここぞの場面でヤクルト・山本樹投手のカーブをとらえた。

 「最近、代打の極意というのが分かってきた。前は4打席で結果を出せばよかったが、今はひと振り稼業。集中しておかないと打てない」と石井。この一撃4点をリリーフに立った、槙原寛己投手が最後を締めて、巨人は首位横浜と7・5差で、かろうじて2年ぶりの優勝に望みをつないだ。

 延長戦での代打満塁本塁打は過去8本あったが、巨人に限っていうとこれが2本目の快挙だった。1960年(昭35)8月21日の国鉄(現、ヤクルト)23回戦(後楽園)で、森昌彦捕手の代打に出た、国松彰一外野手が金田正一投手から放って以来、実に38年ぶりのことだった。

 プロ入り2年目、約1年3カ月ぶりに投げる右腕の男気に応えた本塁打だった。97年5月3日の横浜5回戦(横浜)以来、2度目の先発となった入来祐作投手は、131球3安打10三振の熱投。打線の援護がない中で、ヤクルトに得点を許さず、9回まで無得点に抑えてきた。

 10回、先頭打者で入来に打順が回ってくると、長嶋茂雄監督は代打に福王昭仁内野手を起用。福王が左翼線二塁打を放つと、ベンチ裏でバットを振っていた石井に声がかかった。「そろそろ行くぞ」。気持ちを高めて入った打席。ここで打たなければ、入来に白星は付かない。そう考えると、緊張感とともに気力がみなぎるのが自分でも分かった。

 満塁、そして代打での集中力は4番を張っていた近鉄時代をしのぐものになっていた。近鉄時代の石井の満塁での成績は、43打数9安打(3本塁打)で、打率2割9厘。巨人ではこの日の満塁弾を含め、6打数5安打(1本塁打)で打率8割3分3厘。近鉄では代打としてはわずか8打数しかなかったがノーヒット。巨人ではこの年、ここまで17打数6安打8打点、打率3割5分9厘。

 「吉村(禎章外野手)さんの代打にかける執念は勉強になった。ワンショットで仕留めることの難しさ、それだけ強い気持ちを持って入らないと…。それが分かってきた」。石井には代打という新しいポジションでバッティングの極意をつかんだ。

 長嶋監督は興奮を抑えきれなかった。「ああいうところが石井なんです、ハイ。燃えるものが背中から伝わってきました。やはり石井なんです、石井だから出たホームランです」。再三のバントミス、サイン見落としも代打の劇的一発で長嶋監督は気にする素振りも見せず、神宮の杜を後にした。

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