くじ引きなし、高校球児の大半がプロ志望 指名直後に入団会見?日本とは違う韓国の新人ドラフト

[ 2024年9月17日 10:00 ]

キウムの団長からユニフォームを着せてもらう、ドラフト1ラウンド指名のチョン・ヒョンウ(提供キウムヒーローズ)
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 【室井昌也コラム 月に2回は韓情移入】先週11日、2025KBO新人ドラフトがソウル市内のホテルで行われた。NPBとは異なる点が少なくない韓国のドラフトとは。

 KBOの新人ドラフトはかつて、球団の地元校の選手を優先指名できる制度があったが現在はない。前年の順位が下の球団から順に指名する「完全ウエーバー制」で行われる。指名の重複がないため「くじ引き」はない。

 今回の新人ドラフトは11ラウンドまで実施。KBOリーグは10球団制のため110人が指名された。KBOでは選手トレードの際に「ドラフト指名権の譲渡」を交換条件に含めることがあり、新人ドラフトの指名選手数は各球団均等ではない。今回の指名数は最も多いキウムヒーローズが14人、NCダイノスが9人だった。

 日本の「プロ志望届」にあたる新人ドラフト申請者は1197人で、うち高校生が840人を占める。韓国の高校3年生の野球部員は1077人。野球をやっている高校生の約8割近くがプロ入りを希望している。

 一方の日本は高3球児が約4万人と韓国の約38倍もいるが、昨年プロ志望届を提出したのは139人だった。

 日本では高校生よりも大学生の方がプロ志望届を出す人数が多いが(2023年177人)、韓国の大学生のプロ志望者は高校生の3分の1しかいない(286人)。

 韓国では高卒でプロに行けないと、プロ入りの可能性が大きく減る。ハンファイーグルスで3ラウンド指名を受けた捕手の韓支允(ハン・ジユン、京畿商高)は、「大学の4年と兵役の約2年は遠回りになる」と話した。

 球児の大学野球離れからKBOでは大学側からの要請を受けて、4年生大学の2、3年生もプロ志望届を出せる「アーリードラフト制度」を導入。また、各球団必ず大学生を1名以上指名することが義務付けられた。

 NPBではドラフト指名を待つ選手の姿を、学校や会社から中継するのが定番だ。一方KBOの場合、指名が濃厚な選手はドラフト会場にいる。1ラウンドで名前が呼ばれると球団団長(日本におけるGM)と共にステージに上がり、ユニフォームを着せられて花束贈呈が行われる。

 そして中継局のインタビューも実施。選手の家族も壇上に上がってマイクを向けられ、さながら入団会見のようだ。1ラウンドではユニフォームの背中に指名選手の名前を入れて用意する球団もある。

 KBOでは「育成ドラフト」はないが、ドラフト指名された選手が育成契約となる場合もある。またドラフトを経ず入団する育成選手もいる。その場合、契約金は発生しない。今回指名漏れした選手たちはドラフト外でのプロ入りを願う。

 新人ドラフトの冒頭、KBOのコミッショナーにあたる許亀淵(ホ・グヨン)総裁の挨拶が印象的だった。「指名されなかった選手は失望しないでください。夢をあきらめなければいつかダッグアウトに入れる日が必ずくるはずです」。

 ※野球部員数は大韓野球ソフトボール協会、日本高等学校野球連盟調べ

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