TORACO記者・杉原 甲子園でのビール販売の裏側を追う 努力と工夫の末に至福の一杯

[ 2024年7月19日 05:15 ]

連日4万人を超える大観衆が詰めかける甲子園

 【TORACO記者・杉原瑠夏 調べたガール書きたガール】新人虎番記者・杉原瑠夏が阪神に関わる人やもの、裏側を探る「調べたガール書きたガール」。第2回は、暑い時期に欠かせない球場でのビールが、販売スタッフによってどのように販売されているのか。努力と工夫によってお客さまに至福の一杯が届けられる裏側を追いかけた。

 7月に入り、球場で飲む冷た~いビールがおいしい季節になった。連日、4万人を超える大観衆が詰めかける甲子園球場では熱戦が展開。その舞台裏では観客席でビールを販売するスタッフたちも奮闘している。

 「最初はしんどいことの方が多かったんですけど続けていくうちに、楽しいと思うようになった」

 そう話してくれたのは右翼席でビールを販売して4年目になる21歳の女子大学生だ。個人情報の観点から匿名で取材に応じてくれた。甲子園球場ではアサヒビールとキリンビールの2社がビールを販売。「キャスト」と呼ばれる販売員は満杯時は15キロにもなるビールのたるを背負ってアルプス席などの階段を上り下り。ビールを注ぐ際には膝立ちし、立ち上がる動作を繰り返すためかなりの負担がかかる。加えて膝を守るサポーターや、おつまみを腕周りにぶら下げるため動きにくい。実は記者もスポニチ入社前の2年間は「キャスト」として同じ経験をした。最初は背中から倒れそうになり苦戦したことを覚えている。

 販売方法も工夫している。「階段を上る時に上半身を動かさないよう」に心がけ、たるの中で泡をつくらないように意識。雨の日や4月の寒い時期では売れないため、購入してくれるお客さんを大切にする。飲むペースを把握し、何時ごろに再度販売すればいいかなど会話も重視。また阪神が守備の時間帯や得点が入った直後が一番売れる。その“勝負どころ”に備え、満杯のたるを用意しておくなど準備も欠かさない。

 “戦場”は観客席だけではない。客席の裏側にある「基地」と呼ばれるバックヤードでは、主にたるの交換などを行う。そこで販売スタッフをサポートする21歳の男子大学生はたる交換の時間短縮を意識しているという。

 「早くしないとみんなの売り上げが変わってしまう」

 今季は2リーグ制以降では球団初となる連覇が懸かっていることもあり、売り上げも好調だ。ちなみに当時、記者の1日最高売上げは153杯でエリア内の20人中真ん中くらいだった。阪神が得点すればビールも売れる。猛虎を応援する熱い思いは虎党もキャストも同じだ。

 ◇杉原 瑠夏(すぎはら・るか)1998年(平10)8月1日、大阪府箕面市生まれの25歳。21年4月にスポニチに入社し、総合コンテンツ部配属。24年1月から報道部に異動して阪神担当。幼稚園から空手を習い、中高はバレーボール部。高校野球が好きで愛読書は「甲子園の星」。趣味は映画観賞と読書。

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