佐々木朗希 忘れない3.11世界1勝8K 父と祖父母亡くした9歳の少年がWBC侍最年少21歳勝利投手

[ 2023年3月12日 05:30 ]

WBC1次ラウンドB組   日本10ー2チェコ ( 2023年3月11日    東京D )

<日本・チェコ>3回、汗を飛ばして力投する佐々木朗(撮影・光山 貴大)
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 特別な日に、「世界デビュー」で躍動した。侍ジャパンは11日、カーネクストWBC1次ラウンド東京プールのチェコ戦に佐々木朗希投手(21)が先発し、3回2/3を2安打1失点(自責0)、毎回の8奪三振。最速は164キロをマークした。WBCの日本選手では最年少の勝利投手となり、チームは3連勝で1位突破に王手。12年前の「3・11」に東日本大震災で父と祖父母を亡くした右腕が、大舞台で輝いた。

 震災後に生まれた子供たちも多くなった。東日本大震災から12年。佐々木朗は、風化させないために経験を発信する必要性を感じている。日本代表として「僕が投げている姿で何か感じてもらえたら」という思いだった。

 天国に届けた。家族に届けた。被災地に届けた。日本中に、世界デビュー戦でWBCでの日本代表最年少勝利を届けた。「今日、満員のドームの中で投げることができてうれしい。今日、このマウンドに立てたことに感謝しました」。観客席では母・陽子さん、弟・怜希さんも白い代表ユニホームを着て拍手を送った。幼い頃は、高校を卒業したら東北で静かに暮らそうと考えていた。意に反して日の丸を背負って、世界中から注目を浴びた。

 直球36球の平均球速は160・6キロだった。「球数が許す限りイニングを多く投げたい」。初回フルプへの初球は164キロ。WBCでの日本代表投手最速だ。4日の中日との壮行試合で日本人最速165キロを計測し、大谷に並ぶまでの自己最速だ。163キロ直球を左翼線二塁打され、失策が絡み1失点。2回以降はフォーク、ダルビッシュに学んだスライダーを増やした。3回2/3を2安打1失点で球数制限のため66球で降板。8三振を奪った。

 父とキャッチボールをする日常は突然奪われた。功太さんは37歳の若さで命を落とした。祖父母も奪われた。津波で家も流され、岩手県陸前高田市から大船渡市への移住を余儀なくされた。それでも「地元が大好き」と言う。成人式は陸前高田市と被災後に育った大船渡市との2カ所で出席した。2つの地元でパブリックビューイングが開催され、お立ち台で「応援は本当に力になる」と感謝した。

 13年に東北に希望をともした楽天・田中将と同じ黄色のグラブを左手にはめ、世界デビュー戦でも使用した。震災当時9歳だった少年は田中将に勇気をもらい、大船渡3年時には163キロ。「令和の怪物」は、昨年4月10日のオリックス戦で史上最年少での完全試合を達成した。次回は米国で開催される準決勝の先発が有力視される。

 試合前にはナインとともに黙とうをささげた。「(3月11日は)分かってはいたが試合に集中した。チームが勝って良かった。自分自身も最低限の仕事はできた」。野球に没頭して悲しみを乗り越え、野球を通じて思いを届けた。(神田 佑)

 ≪09年のダル抜いた≫佐々木朗(ロ)が3回2/3を1失点(自責0)、8奪三振で勝利投手。佐々木朗は現在21歳4カ月。WBCの日本代表としては09年東京ラウンド・中国戦のダルビッシュ有(日=22歳6カ月)を抜く最年少勝利になった。また、1試合8奪三振は13年2次ラウンド・オランダ戦の前田健太(広=9奪三振)に次ぎ、06年準決勝・韓国戦の上原浩治(巨)、09年2次ラウンド・キューバ戦の松坂大輔(レッドソックス)と並ぶ2位タイ。

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2023年3月12日のニュース