阪神は「急」には変わりません “阪急タイガース”化の懸念も 新オーナー「全くあり得ない話」

[ 2022年12月22日 05:15 ]

<オーナー交代会見>会見する杉山新オーナー(撮影・岸 良祐)
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 阪神は21日、杉山健博氏(64=阪急阪神ホールディングス代表取締役社長)の新オーナー就任を発表し、大阪市福島区の阪神電鉄本社で会見を開いた。阪急電鉄出身のオーナーは初めてで、藤原崇起オーナー(70=阪神電鉄会長)は退任。従来兼務だった代表取締役球団会長には秦雅夫氏(65=阪神電鉄代表取締役社長)が就任し、オーナー職と分ける異例の体制を敷いた。

 杉山新オーナーは紺のスーツにタイガースカラーの黄色のネクタイで会見に臨んだ。阪急出身初のオーナー就任について「全く意識しておりません。特別な狙いがあるわけでもない」と強調し、“阪急タイガース”化への懸念も完全否定した。

 「全くあり得ない話。阪神タイガースは、甲子園球場を本拠地にして本当に長い間多くのファンの皆さまから愛され続けて、歴史を積み重ねてきた。ひと言で言えば唯一無二のブランド。これからも阪神タイガースが変わることはあり得ない」

 同じ21日付で阪神電鉄の取締役に今年4月以来の復帰が決定。阪急阪神ホールディングス(HD)から発表された来年3月1日付の人事ではHD代表取締役社長の退任も決まった。“阪神側”の人間という印象を強めた形で、「阪神タイガースの経営権は阪神電気鉄道にありまして、それに変わりはございません」と明言した。

 一方、従来はオーナーと兼任だった代表取締役会長には阪神電鉄の現社長である秦雅夫氏が就任。「代表権」は阪神電鉄生え抜きに残った。阪神と阪急が経営統合した06年当時に預かり保証金25億円と野球振興協力金4億円を合わせた計29億円の支払い義務を免除された経緯を踏まえ、今回も野球協約上の経営者に変更がないことを藤原前オーナーらが他球団に説明。それを補強する狙いも見える異例の「2トップ体制」だった。

 「二人三脚でやっていく方が、より力が発揮できる。阪神タイガースを強くする最善な施策であろうということ。秦社長は阪神電気鉄道の代表取締役でもあられますので、そういうことを踏まえたら代表権を持った会長になられるのがごく自然と思います」

 秦氏は所用で会見を欠席。企業組織としては「代表」が上でも、プロ野球チームとしては「オーナー」が序列上位に立つとみられる。阪急、阪神それぞれでトップを務めた両氏が手を取り合う構図。新オーナーとして「阪神タイガースをより強くし、来シーズンの優勝を果たすことに全精力を向ける」と約束した。(山添 晴治)

 ▽代表権 企業において社外に対する会社の代表として取引や業務を遂行する法律上の権限。取締役会が取締役の中から代表取締役を選定する。代表取締役は会社法で定義された役職であるのに対し、社長、会長は会社内で決められた役職。一方、オーナーは野球協約上の役職で球団を保有、支配する代表者。

 ◇杉山 健博(すぎやま・たけひろ)1958年(昭33)11月20日生まれ、兵庫県出身の64歳。82年東大法学部卒業、阪急電鉄入社。05年取締役。06年、阪急側の経営企画担当役員として阪神電鉄との経営統合を担当。同年発足の阪急阪神ホールディングス(HD)取締役。16年HD副社長。17年阪急電鉄社長、HD社長。16年6月~22年4月、阪神電鉄取締役も務めた。趣味はスポーツ観戦、特に甲子園での高校野球。

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