【新井さんが行く!!】死角が見当たらないヤクルト 5チームの意地も見たい

[ 2022年7月5日 07:00 ]

新井貴浩氏
Photo By スポニチ

 ヤクルトに死角が見当たらない。一番の強みは山田、村上という大きな軸がいること。特に村上はバットで引っ張るだけでなく、ベンチでも最前列から鼓舞する姿が印象的だ。彼らがやりやすいように石川、青木というベテランが後ろから支えている。圧倒的な攻撃力があるから、投手も余裕を持って投げられる。救援陣も数がそろい、無理をしていない。すべてにおいてバランスがいい。

 もともと外部から補強せず、自前の選手が育つ土壌がある。この2年だけでなく、この先も続きそうな強さだ。村上でさえまだ22歳なのに、その下の世代がもう台頭してきているから。高卒4年目の浜田、3年目の長岡、2年目の内山壮…。体は決して大きくないのに、みんなフルスイングできるのがいい。打撃コーチのスギさん(杉村繁)の存在が大きいと思う。

 まだ若手だった頃、スギさんから「かちあげ君」と呼ばれていたことを思い出した。当時もヤクルトでコーチ。なぜか気にかけてくれ、試合前練習で、すれ違うたびに声をかけられた。「かちあげ君。かちあげていけよ」って。小さくまとまらずに、思い切りよくスイングしなさい…ということだった。試合で打てなくても、次の日にまた「気にしなくていい。今日も、どんどん、かちあげろよ」と。敵味方は関係ない。本当におおらかな人だ。短所ではなく長所に目を向けて伸ばしてくれる。

 「大きく強く」振ることから「小さくコンパクト」への変化はできても、「小さくコンパクト」から「大きく強く」への逆の変化は難しい。若い選手は失敗することも特権。失敗することで分かることも多い。枝葉は経験を重ねていくうちに身につければいい。まずは幹を大きく育てることだ。やはり指導者の導きは大きい。いまのヤクルトは若い選手が本当に伸び伸びとプレーしている。ボール球を空振りしても、スギさんが「気にするな」「思い切りいけ」と背中を押している光景が想像できる。

 もちろん、まだ7月が始まったばかりで、60試合以上が残っている。このまま終わっては、寂しすぎる。強いヤクルトをどう止めるのか。5チームの意地も見たい。(スポニチ本紙評論家)

続きを表示

2022年7月5日のニュース