努力を重ねたからこそ決断できた「投手・根尾」―登場時ではなく登板後に大歓声を浴びる選手に

[ 2022年6月22日 08:00 ]

中日・根尾
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 この数年で一番の大歓声だった。6月19日の巨人戦。9回2死から中日・立浪監督がベンチを出て選手の交代を告げる。場内アナウンスが「ピッチャー谷元に変わりまして…」の後、たっぷりと間を取って「根尾」とコールすると歓声と拍手でバンテリンドームが揺れた。

 投手転向に賛否両論が飛び交う中で、これほど多くのファンが「投手・根尾」を見たかったのだと思い知らされた。

 入団時に「ショート1本で勝負する」と宣言してプロの世界に飛び込んだ2018年ドラフト1位の内野手は、今年3月に外野手に登録が変わり、6月21日に投手登録となった。

 交流戦が終了し、札幌からの移動日だった13日、立浪監督の口から投手転向を聞いた時は、正直、複雑な気持ちだった。昨秋から必死にもがく野手・根尾を見てきたからだ。誰よりも早くグラウンドに出て、一番遅くグラウンドを出る。どんな練習にも前向きに取り組み、試行錯誤し、苦悩する姿する姿があった。

 立浪監督も「あれだけ練習してうまくならない訳がない」と認めるほどの努力。ショートでもう少し出場機会があれば…の思いもあるが、誰にもまねのできない努力を重ねてきたからこそ、一つの区切りを付け、もう一つの才能にかける大きな一歩を踏み出せたのだと思う。

 これからも壁にぶつかるだろう。野手に未練があるかもしれない。だが、あの日、バンテリンドームに響いた大歓声を忘れないでほしい。そして、いつかはその歓声が登場時ではなく、打者を抑え込んだ登板後に送られる選手になってほしいと願っている。(記者コラム・中澤智晴)

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2022年6月22日のニュース