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【内田雅也の追球】長坂の本塁憤死に思う 今は勝ちきる「超積極的」采配が欲しい

[ 2022年5月27日 08:00 ]

交流戦   阪神0-1楽天 ( 2022年5月26日    甲子園 )

<神・楽> 8回2死二塁、長坂の本塁憤死で矢野監督はリクエストを行使するためベンチを出る(撮影・大森 寛明)
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 敗れた阪神にとって最も悔やまれるのは8回裏の本塁憤死である。0―0の2死二塁。近本光司の左前打で長坂拳弥が本塁を突き、左翼手・西川遥輝のワンバウンド好返球でアウトになった。

 球団動画配信サービス『虎テレ』を再生し、見直してみた。長坂は第2リードもしっかり取り、フルカウントからの「ストライクスタート」も良かった。三塁も小さく鋭く回っていた。走塁面での過失はなかった。

 「回れ」を命じた三塁コーチ・藤本敦士の判断も十分理解する。西川が打球を捕った時、長坂はまだ三塁手前だった。それでも1点勝負の終盤。イチかバチかの突入はある意味当然である。

 近本インパクトの瞬間から本塁到達までを手もとのストップウオッチで計ると6秒54。平均6秒6~7と言われるなか、速い方の数値だった。

 タイミングはアウトだった。ただ、リクエストでのリプレー検証を見ると間一髪に近かった。

 だからこそ、代走はなかったのか、と用兵への疑問が残る。長坂が鈍足でないことはキャンプ中のタイム計測で知っている。だが間一髪なのだ。ベンチにいた植田海や熊谷敬宥ならば、本塁をもぎ取っていただろう。

 8回裏1死から長坂が左前打で出た時から「代走ではないか」とみていた。宋家豪はクイックが速くなく、植田や熊谷なら二盗が狙えた。バントで二塁に進めた時は代走の思いを強くした。外野が前に来ていた。

 敗戦後、監督・矢野燿大は代走について「俺がいききらんかった」と話した。「延長12回という難しさもあったし、その後に代走を出したいところもあったし――」

 12回まで考えるのは姿勢が守りに入っている。負けない采配だ。だから投手起用で湯浅京己に代えて渡辺雄大のワンポイントと決断できるのだ。

 今は勝ちきる采配が欲しい。守勢より攻勢。監督就任時「超積極的」を掲げていたではないか。

 今季同様、開幕から最下位に低迷し、球団史上最低勝率・331に終わった1987(昭和62)年、監督・吉田義男はマスコミやファンから相当な批判を浴びながら前を向いていた。「攻めているか」「闘志はあるか」と自問自答を続けた。勝負に徹していた。今の矢野も胸に手をあて、考えてほしい。 =敬称略=
 (編集委員)

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