【内田雅也の追球】チーム全体で得点を 孤独な打席での考え方を変えたい

[ 2022年5月20日 08:00 ]

セ・リーグ   阪神0-3ヤクルト ( 2022年5月19日    神宮 )

<ヤ・神>4回2死二塁、糸井は空振り三振に倒れる(撮影・大森 寛明)
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 また零敗である。今季11度目はむろんリーグダントツで、44試合消化だから4試合に1度は無得点という計算になる。ちょっと異常である。

 8点を奪って快勝した前夜に書いた<打線も復調気配でチーム浮上への土台は整ってきた>が恥ずかしい。むろん打線は水物で、大勝翌日に沈黙ということはある。それでも、こうした接戦、僅差の試合をものにできなければ浮上はない。

 38年目を迎えた野球記者の経験から言えば、ペナントレースを戦うには大勝・競り負けは弱いチームの傾向で、競り勝ち・大敗傾向の方が優勝に近づけるものだ。

 この夜はわずか4安打だった。だからといって手も足も出なかったわけではない。好機はあった。3、4、5、9回と得点圏に走者を進めた。だが、その得点圏で打席に立ったのべ7人が無安打と、またも「あと1本」が出なかったのだ。

 前夜、今季最多4本塁打で8点を奪った際も、得点はソロ、2ラン、3ラン、ソロ、そして敵失と適時打はなかった。実は前夜もこの点を案ずる一文を盛り込もうと思いながら、紙数の関係で省いた。17日も得点は糸原健斗のソロだけで、つまり、今回の3連戦、得点圏で適時打した打者は1人もいなかったのである。

 もう何度も書いてきたことだが、好機では相手バッテリーの配球を読んだうえ、狙い球を絞って打席に臨みたい。「ウォームハート、クールヘッド」(心は熱く、頭は冷静に)である。

 逆説的に「自分で還す」という熱い心を捨てることだ。新井貴浩(本紙評論家)が今月14日付で書いていた<好機でこそ「決める」ではなく「つなぐ」>という意識の持ち方がヒントになる。<いまは自分で自分に重圧をかけすぎているように映る。好機でも「後ろにつなぐ」つもりで臨めば、少しは楽にできる>。

 相手の姿勢も参考にしたい。山崎晃大朗は5回裏2死から粘って四球を得て、山田哲人の先制二塁打を呼んだ。7回裏も2死一塁からセーフティーバントで内野安打、敵失も誘って2点目を呼んだ。17日にも実に13球粘った打席があった。

 打てずとも粘り、次につなげる。独りで決めようとせず、チーム全体で得点をもぎ取りにいく。誰も助けてくれない孤独な打席での考え方を変えたい。 =敬称略=(編集委員)

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2022年5月20日のニュース