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もっともっと「女子野球人」を アンダスローの23歳元女子プロの挑戦 野球用品アパレル設立で描く夢

[ 2022年5月20日 12:14 ]

元女子プロ野球選手の山口千沙季さん(本人提供)
Photo By 提供写真

 元女子プロ野球選手の山口千沙季さん(23)が昨夏、新しい試みを始めた。野球用品を扱うアパレル「C to A’A(シートゥーアー)」を設立。売り上げを元手にして、女子野球の普及イベントをたくさん開く――。そんな情熱を持ちながら、第二の野球人生を歩んでいる。

 「女子プロ野球選手にピリオドを打ったときに野球はもういいやってなったけど、毎日が物足りなくて。野球少女のために何か貢献できないかなと思って」

 第1弾としてアンダーシャツを製作。自らこん包し、自筆のメッセージカードを添えて購入者に商品を送った。想定の2・5倍の売り上げがあった。女子小中学生向けの野球教室を、今夏に関西で開催するための資金が、いくらかできた。その教室には他の女子選手を呼ぶ計画。野球少女のモチベーションアップに。進路や悩み相談の相手に。技術だけでなく、少女の心のサポートにも重点を置く野球教室を頭に描いている。

 山口さんは、アンダースローの投手だった。新潟・開志国際高卒業後の18年に女子プロ野球の世界に身を置いた。しかし、19年オフに突如、女子プロ野球選手でいることができなくなった。
 女子プロ野球は2010年に2チームで発足し、一時は4チームに広がったものの、19年オフに運営がついに行き詰まった。選手は先行きが見通せなくなり、同年オフに大量退団。21年に完全に消滅した。

 山口さんは、19年オフの最初の混乱で2年間の短いプロ生活に別れを告げた。しかし、白球への情熱が失われることなく、愛知のクラブチームでプレーを続けた。現在は、都内で会社員をしながら、週末に関西にやってきて、クラブチームの京都文教で野球を楽しむ。それと平行して、野球用品のアパレル運営と、競技の振興に挑戦している。「シートゥーアー」では、今後、女性視点のデザインで、帽子や小物なども展開するそうだ。

 今、女子の硬式野球人口が増えている。全国高校女子硬式野球連盟の登録数は、15年が19校、698人だったのに対し、21年6月には43校、1320人まで増加した。五輪で2度金メダルを獲得し、高校の女子登録数1万7408人、1241校(21年)を誇るソフトボールとは、大きな差があるかもしれない。しかし、昨夏、高校の全国大会である「選手権」の決勝が初めて甲子園で、今春には「選抜」の決勝が東京ドームで初開催された。女子高生が憧れの舞台を目指せるほど、環境は変化している。

 女子プロ野球は確かに根付かなかったが、その混迷と消滅がガラガラポンを引き起こし、プロ野球の球団が女子クラブチームを持つ新しい潮流も生まれた。20年の「埼玉西武ライオンズ・レディース」の誕生を皮切りに、「阪神タイガースWomen」が続き、巨人も23年から活動開始を掲げている。全国に34あるクラブチーム(西武、阪神を含む、21年6月時点)のいくつかと連携して、新しい発展を遂げる可能性がある。

 海の向こうでは、ソフトボール選手から米大リーグ・ジャイアンツのコーチになったアリッサ・ナッケンさん(31)が4月12日に一塁コーチを務め、女性がMLB史上初めて公式戦のグラウンドに立った。日本では夢のまた夢のような話で、山口さんはまず、男性指導者が主流の国内女子野球界に「女性指導者が増えてほしい」と考える。「野球用品アパレル」と「野球教室」は、グラウンド内外で活躍する“女子野球人”の増加を願う取り組み。23歳の挑戦が始まった。(記者コラム・倉世古 洋平)

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