筑波大・准教授 野球部監督 川村卓氏が掲げるロッテ・朗希の「3つの進化」

[ 2022年5月10日 05:30 ]

ロッテ・佐々木朗希
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 筑波大の准教授で野球部監督でもある川村卓氏(51)がロッテ・佐々木朗希投手(20)の今季の急成長の理由に「3つの進化」を挙げた。動作解析の第一人者でもある同氏は、同じ岩手出身のエンゼルス・大谷と共通する両足の動きと体の変化が160キロを連発する異次元の投球につながっていると分析。同投手は次回登板である13日のオリックス戦(京セラドーム)に向け、ZOZOマリンで調整した。(構成・柳内 遼平)

 佐々木朗投手の投球フォームにはエンゼルス・大谷投手をはじめ、球速の速い投手と下半身の使い方に共通点がある。

 【プレートの使い方】まず、左足を上げてステップしていく時に軸足である右足で投手板(プレート)を押す動作がある。そこで投手板を強く押せるかどうかが「速い投手」の条件だ。高く左足を上げるところまでは大船渡時代と変化はないが、当時はそのまま下りていく体の動きだった。それが現在は右足で投手板を押す姿勢ができるようになり、力強さ、前に進む推進力が出てきた印象。主に股関節、お尻の方の筋肉が使えるようになったことで、より低い姿勢で投手板を押すことが可能になったと考えられる。地面からもらえる反力も大きくなっている。

 大谷投手も日本ハム時代は同じ課題があったと思う。低い姿勢は以前からできていたが、低い姿勢をしすぎて、逆に投手板を押せていない状況があった。去年、投手として勝利を重ねるようになった時期くらいから、足を振り上げて下ろす時にしっかり横の動きができるようになったと感じている。

 【お尻の上がり方】踏み込んだ左足もポイントになる。踏み込んだ時、突っ張ると同時にお尻が上に上がっていくような動き。それをやると、下半身の力を上半身に伝えられる筋肉の動きになる。見た目は突っ張ることが大事なように見えるが、お尻が上がることで足が伸びていくということが正しい。逆に膝が前に出てしまうと、エネルギーは吸収されてしまう。大谷投手は以前からできていたが、佐々木朗投手は踏み込んだ左足がつぶれてしまうような、下に沈んでしまうような動きだった。それが現在は踏み込んでからお尻が上がっていくような動きをするようになった。これも「速い投手」に共通する動きと言える。

 【体の変わり方】実際に投球を見た大船渡時代と比べて佐々木朗の体つきは変化している。特に背中周りとお尻、太腿の裏側の筋肉はかなり変わっている。まだまだプロ野球の選手、メジャーリーグの選手に比べたら細いが慌てて筋肉をつける必要はない。体が横に太くなるのはまだまだこれから。大谷投手がそうだったように25歳以降にもっと花開くような形で階段を上がっていくことが望ましい。佐々木朗投手は170キロを出すポテンシャルも備えている。あとは本人がそれをやろうとするかだ。やはりチームが勝つために投げており、いまも10割では投げていない。8~9割で力感なく安定して投げていることが良い結果につながっている。速いボールを投げることは体に負担が大きいことは間違いないが佐々木朗投手に関しては、まずは1年を通して投げることに慣れていく作業が必要になる。

 ≪高3夏には直接指導≫川村氏は佐々木朗が大船渡でプレーした当時監督の国保陽平氏(35)の恩師。佐々木朗の投球を初めて見たのは高3年夏の岩手大会後でU18W杯に参加する直前だった。筑波大の練習に参加した当時の右腕を「2日目にはどういうところを鍛えたらいいかを質問してきた」と回想する。強豪ひしめく首都リーグに所属する筑波大相手のシート打撃にも登板した当時を「全然、(打球が)前に飛ばなかった。打者は“フォークは消えた”と言っていた」と懐かしんだ。

 ◇川村 卓(かわむら・たかし)1970年(昭45)5月13日生まれ、北海道出身の51歳。札幌開成では主将で3年夏に甲子園出場。筑波大でも主将を務めた。卒業後は浜頓別高で監督を務め、00年から母校・筑波大野球部の監督に就任。大学では准教授も務め、コーチング学や野球方法論を専門分野とし、動作解析の第一人者でもある。

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