すべて1点勝利の広島3連戦 立浪マジックを可能にしたコミュ力

[ 2022年4月5日 09:00 ]

3日の広島戦の9回、ピンチを迎え中日・立浪監督に声を掛けられる柳=中央(撮影・椎名 航)
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 中日は開幕から2カード連続負け越しの後、本拠地・バンテリンドームで広島に3連勝し、初の勝ち越しに成功した。この3試合はすべて1点差の接戦で、どちらに転んでもおかしくない総力戦だった。

 立浪監督の采配、読みが冴え渡った。1日の初戦は試合前に打撃フォーム変更を指示した5番・阿部が2号ソロを含む2安打2打点の大活躍を見せた。今季はバットを寝かせて構え、無駄な動きを省いたコンパクトなフォームでオープン戦でも手応えをつかんでいたが、開幕してからは打率1割台と低迷。指揮官の助言で13本塁打を放った20年時のバットを立てる力強いフォームに戻し、いきなり勝利に直結する結果を出した。

 2戦目は延長12回の激闘の末、逆転サヨナラ勝ちを収めた。ベンチ入りの9投手を全員使い切り、最終回に最後の森が登板した際には、万一に備え、甲子園優勝投手で今季は外野手登録の根尾がブルペンで準備した。これも行き当たりばったりの指令ではなく、春季キャンプでブルペンで投球練習をさせるなど準備していた秘策だった。

 3戦目は1点リードの9回表に先発の柳が1死一、二塁のピンチを背負うと、指揮官自らマウンドに向かい、「ここまできたんだから、もう一度、腕を振って攻めていけ。必ずゲッツー取れるから」と暗示をかけ、その言葉通り三ゴロ併殺でゲームセットとなった。指揮官は「たまたま」と言うが、直前に三塁の石川昂の守備位置をわずかに三遊間寄りに移動させていたことは見逃せない。

 まさに立浪マジックさく裂の3連勝だったが、私は偶然とは思えない。立浪監督は昨秋のキャンプから頻繁に選手に声をかけ、積極的にコミュニケーションをはかっていた。アドバイスや自分の考えを伝えるだけでなく、その選手の調子や考えていることを把握していたのだと思う。

 シーズンが始まると、その頻度はさらに高くなった。試合前の練習ではベンチのフェンス前に陣取ることが増え、出入りする選手に声をかけるようになった。試合を重ねれば、さらに理解は深まるだろう。コミュ力に裏打ちされた立浪采配。次はどんなマジックが飛び出すか楽しみだ。(記者コラム・中澤 智晴)

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2022年4月5日のニュース