【内田雅也の追球】メンバー未定の希望 長いシーズン、チーム力支えるのはスタメン以外の控えの力量だ

[ 2022年3月20日 08:00 ]

オープン戦   阪神4ー2オリックス ( 2022年3月19日    京セラD )

<オープン戦 神・オ>9番にDH小野寺が入った阪神スタメン(撮影・奥 調)
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 1年間のシーズンを通じて戦うプロ野球には季節感がついて回る。3月の阪神で言えば、京セラドームに来れば、開幕までの総仕上げといった臨戦態勢を感じる。1997年の開場後、オリックスと最後のオープン戦を戦う場となっている。

 だから、この日、先発メンバーを見た時に違和感を抱いた。オープン戦は残り2試合。指名打者(DH)は外し、投手も打順に組み入れての本番想定のオーダーと思っていたからだ。

 ところが、DHを使って小野寺暖が入り、2軍から呼んだ山本泰寛と熊谷敬宥で1、2番、江越大賀を中堅に入れていた。開幕想定のベストメンバーではなく、1軍当落線上の選手を試す「試験」オーダーだった。

 本来はこの時期に試すオーダーではない。ところが今年は2月末に2軍キャンプ地でコロナ感染が相次ぎ、3月に入っても影響があった。おかげで先に書いた当落線上の選手を試す機会が失われていた。ようやく、1軍オープン戦で最終試験を行えるようになった。

 さらに、故障者や故障明けの選手も多かった。首脳陣とすれば、見極めが難しかった。そんな事情が浮き彫りとなる選手起用である。

 もちろん、野球は9人(DH制なら10人)で行う競技である。ところが実際はスタメン以外の控え選手の力量がチーム力を支えている。

 もう何度も書いてきたので、当欄読者なら「またか」となろうが、また書いてみる。1990年代のいわゆる暗黒時代、開幕前、フロント陣はオーナーら本社上層部に提出するリポートで、毎年「優勝争い」と戦力分析していた。耳ざわりのいい言葉を並べ報告していたわけだ。毎年最下位か5位だった時代である。

 そんな分析ができたのか。当時のあるフロントによると「レギュラー9人だけの戦力評価でAクラスと分析していた」と聞いた。実際は控えや2軍選手など選手層の厚さが物を言う。春夏秋とシーズンは長いのだ。

 だから、この日のスタメンを見た時に感じた「開幕間近のメンバーではない」といった批判は書かない。そして宮城大弥から右狙いで適時打した熊谷、快足を飛ばし生還した江越の、生き残りをかけた姿勢に感じ入る。

 開幕メンバー未定という現状は不安ではなく、希望ではないか。何より、可能性や変化をはらんでいるではないか。 =敬称略=(編集委員)

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2022年3月20日のニュース