柵越え11本 イチロー先生 国学院久我山で特別指導「意識するだけで変わる 考えないと永遠にできない」

[ 2021年11月30日 05:30 ]

国学院久我山の選手の前でフリー打撃を行うイチロー氏
Photo By 代表撮影

 マリナーズ会長付特別補佐兼インストラクターのイチローさん(48)が29日、秋季高校野球東京都大会で優勝し、来春センバツ出場を当確させている国学院久我山の野球部員を指導した。高校生への指導は昨年12月の智弁和歌山以来、2度目。フリー打撃では自ら柵越え11本も披露し、三振をしない技術や走塁の打球判断など指導は多岐にわたった。

 午後6時30分。国学院久我山グラウンド。日は暮れ冷たい風が吹きすさぶ中、イチローさんの熱のこもった指導が終わった。「今日はここまで。お疲れさまでした」。グラウンド外で見守った一般生徒から拍手が起こると、歩み寄り「野球部をよろしく」と伝えた。

 一通の手紙に心を突き動かされた。昨年、知人を介して左翼手の田村優樹(当時2年、現3年)と知り合うと、今年1月に「強くなりたい」などとメッセージを添えられた手紙が当時の2年生部員全員から届いた。午後3時すぎに始まった練習冒頭のあいさつでイチローさんは「東京都大会で優勝したから来たわけではない。凄い気持ちの伝わる手紙」と明かした。

 まずフリー打撃を実演。75スイング中、柵越えは11本。部員からは驚きの声が上がった。直後に「見逃し方」について質問を受けると「見逃すと思ったらバットが出てくる。谷繁さん(元中日など)に“松井秀喜(元ヤンキースなど)とイチローはそれができていた”と言われた」。日米通算4367安打の打撃論を展開し、その後は「僕は(現役を)長くやったけど、走塁だけは簡単にならない。跳びながらリードを取ることはしない方がいい」と言い、細かくリードの取り方まで教えた。走塁練習は「まず真っすぐ走る。腕は後ろに振る。一歩が長くなり、肩甲骨が動きだすとまた一歩が大きくなる」と実演。「意識するだけで変わる。何日かではできないが、考えないと永遠にできない」と説いた。

 かねて「メジャーリーグは今、“コンテスト”。どこまで飛ばすか。野球とは言えない。どうやって点を取るか。高校野球にはそれが詰まっている」と語ってきた。考えて、表現する。それが日本野球の強みだ。昨年12月に智弁和歌山を指導した際に「ずっと見ているからね。ちゃんとやってよ」の言葉を授けている。強制的にやらされるのではなく、常に自分で「考える」ことが指導理念。日本野球の強みであり、イチローさんが高校野球に携わる理由でもある。

 今後は年内に他2高校を指導予定。練習後に記念撮影を終えると「また、どこかで」と残し、さっそうと帰路に就いた。

続きを表示

この記事のフォト

2021年11月30日のニュース