【ヤクルト・山田哲人独占手記】絵馬に込めた「導」 新主将の決意、“甘え”からの脱却

[ 2021年11月28日 05:30 ]

SMBC日本シリーズ2021第6戦   ヤクルト2ー1オリックス ( 2021年11月27日    ほっと神戸 )

<オ・ヤ>会見で日本一の喜びを語る山田(撮影・光山 貴大)
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 東京五輪で金メダルを獲得し、リーグ優勝に日本一。目標が全てかなった。こんな一年は想像していなかった。

 毎年、地元の大阪の住吉大社に初詣に行って絵馬を書いている。今年は「導」。主将としてチームを優勝に導くという思いを込めた。レギュラーになりたての頃は「活躍」や「飛躍」。成績を少しずつ残せるようになって、続けることの難しさを知った時期に「継続」。昨年は「勝負」。今年は、キャプテンとしての決意を書いた。

 昨年の12月に残留を決め、高津監督に「主将をやらせてください」と志願した。監督も最初は冗談と思ったかもしれない。自分でもそういうタイプじゃないと決めつけていた。履正社時代は副キャプテンすら断り、岡田龍生監督に「前代未聞。キャプテンを断ったやつは今まで2人おったけれど、副キャプテンを断ったやつはおらん」と言われたくらい。

 そんな自分が直訴した理由は、同じ環境にいるとどうしても甘えが出ると思ったから。周りにも「お前が先頭に立てばチームが強くなる」と言ってくれる人がいた。自分もチームもいい方向に行くんじゃないかと思い、お願いした。前任の青木さんからも「やりたいようにやっていいよ」と言ってもらった。

 主将らしいことはしていない。ただ若手に言うべきことは言った。開幕直後の中日戦。代走で出た新人の並木が三塁走者でスタートが悪くて本塁で憤死した。帰りのバスで横に座り「お前の立場上、足でアピールするのが大事。息の長い選手を目指すなら、できないとあかん。分からないことがあれば、どんどん俺に聞いてくれていい」と言った。バントを失敗して一人でイライラしていた塩見に「チームは勝っている。一人で雰囲気を悪くするな」と怒ったこともある。きつい言い方だけど期待しているからこそ言った。日本一になれたのも間違いなく彼がいたから。終盤の広島戦で打球を後逸して負けた試合もあったけど「ここまで来られたのは、お前のおかげ。気にするな」と声を掛けた。

 東京五輪では貴重な経験をさせてもらった。DHでも、物凄く緊張した。ご飯が喉を通らない日もあった。MVPに選んでもらったけど運だと感じている。打てたのもたまたま。自分の実力じゃない感じがする。

 今回、日本一になったけど、主将の責任を果たせたとは全く思っていない。自分はただユニホームの肩にキャプテンマークがついているだけ。評価は自分ではなく、周囲がしてくれるものだと思う。来年も勝ち続けたい。(東京ヤクルトスワローズ内野手)

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