ヤクルトVに導いた高津監督の繊細かつ大胆な操縦術 規定投球回到達者も3割打者もいなくても勝った

[ 2021年10月26日 21:22 ]

セ・リーグ   ヤクルト5─1DeNA ( 2021年10月26日    横浜 )

優勝し胴上げされるヤクルト・高津監督
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 ヤクルトは26日、DeNAに5─1で勝ち、2位・阪神が中日に敗れたため、15年以来、6年ぶり8度目のリーグ優勝を決めた。前年最下位からの優勝は15年ヤクルト自身に次ぎ、のべ8度目で、2度目の達成はヤクルトが史上初となった。高津臣吾監督(52)はメジャーリーグ出場経験のある日本人監督として、初制覇となった。

 試合に勝ち、阪神が引き分け以下なら優勝が決まる一戦。午後9時4分に試合に快勝し、阪神の結果を待った。午後9時22分。三塁ベンチで待ったチームに歓喜が訪れた。たくましくなった選手たちの腕で、5度宙を舞った高津監督は「気持ちよく胴上げしてもらった。選手の頑張りがすべて。心からおめでとうと言った」と話した。

 高津監督に導かれ、戦いを経るごとに成長した選手は、1点を先制されてもあわてることはなかった。高津監督も先発した高梨を4回で代え、2番手の石山にスイッチ。5─1とリードした6回からは、今季12試合すべて先発起用してきた高橋を起用、2イニングを無失点でつないだ。25日の試合前に張られた「腹をくくっていったれぃ!!」の紙。高津監督直筆のこの文字を胸に選手は、優勝がかかった一戦でも、決意のプレーを積み重ねた。01年、ヤクルト守護神として横浜スタジアムで胴上げ投手となった高津監督は、20年後、今度は指揮官として、同地で頂点に立った。

 チーム再建を託された就任1年目の昨季。故障者が相次ぎ、2年連続最下位に終わった。「なんで勝てないんだろう…」。頭を悩ませる日々。それでも「空元気でもいいから明るく振る舞うことを心掛けた。自分がしんどい顔をしていたら、チームに影響が出る」と球場では暗い姿は決して見せなかった。

 今年の春季キャンプは他球団より休養日の間隔が短い「3勤1休」でスケジュールを組んだ。2年連続最下位で猛練習も必要だが、故障回避を最優先。「1年間、フルメンバーで戦い抜く」を念頭に置き、周囲の批判は気にしなかった。

 現役時代に守護神を務めた指揮官は、投手起用も疲労を考慮してシーズン終盤まで一貫した。先発には中5日はさせず、中継ぎの連投は3日連続まで。決して潤沢ではない投手陣をやりくりした。9月にベテランの石川をチーム今季初の中5日で投入。10月の巨人、阪神6連戦の天王山でリリーフ陣の4日連続登板を解禁し、5勝1敗。勝負所を見極めたマネジメントだった。

 「育成と勝利」も見事に両立させた。高卒2年目の奥川を将来のエースに育てるため、原則的に10日以上で登板させた。リリーフでは梅野や大西ら発展途上の投手を重要な場面でも起用。経験を積ませ、チーム力の底上げに成功した。

 外国人選手には気を配った。現役時代、メジャー、韓国、台湾でプレー。異国の地で野球をする苦労は身に染みてわかっている。「言葉の通じない国で少しでもリラックスしてくれたら」。新加入したオスナやサンタナらと顔を合わせれば、必ず「元気?」と声をかけた。

 「言葉」で選手を奮い立たせ、グラウンドに送り出した。9月7日の阪神戦前、ミーティングで「絶対、大丈夫。何かあったら、僕が出て行く」とナインを鼓舞した。そこからチームは快進撃。9月22日に今季113試合目で初めて首位に立つなど、球団新の13戦負けなしとなる9連勝をマークした。右肩上がりの成長曲線を描いたチームは優勝まで駆け抜けた。

 規定投球回到達者も3割打者もいない。高津監督の信念と繊細かつ大胆な選手操縦術が、チーム力を最大化させた。「絶対大丈夫です!我々は絶対にどんなことがあっても崩れません」と20年ぶりの日本一へ、力を込めた。

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