「いばらの道」でも最後まで前向きな姿勢 記者が見る「斎藤という男」

[ 2021年10月1日 12:15 ]

今季限りでの引退を発表した斎藤佑樹投手
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 日本ハムの斎藤佑樹投手(33)が現役引退を発表した。11年間のプロ野球人生は「いばらの道」ばかり。特にここ数年はネガティブな声ばかり渦巻いていたが、最後まで1軍マウンドに立とうとした前向きな姿勢は長年の取材を通じて分かっていた。

 早大時代に股関節を痛めると、日本ハム入団1年目は左脇腹痛、12年暮れには右肩関節唇損傷と故障だらけ。入団当初は150キロの本格派を目指していたからこそ自然と無理がたたった。それでもプロ野球選手を続ける気持ちは全く変わらない。昨年10月、右肘じん帯を断裂しながら、早期復帰を目指しPRP(自己多血小板血しょう注入)療法を選択。トミー・ジョン手術はリハビリ1年以上時間がかかると、退路を断って今季に臨んだ。7月12日のイースタン、DeNA戦に269日ぶりの実ウンドに立ったが、10月1日現在24試合を残した1軍昇格への道は残ってなかった。

 アマ時代の栄光とはかけ離れた現状に、なぜ現役を続けるのか聞いたことがある。「ボクを応援してくれるファンの声もあります。それと野球に対する情熱。いつも野球に対して情熱を持っているし、どんなことがあっても頑張りたい」。紆余曲折の11年を、野球を志す後進の選手に伝えたい夢も抱いている。確かにきれい事かもしれない。ただ06年甲子園では社会現象まで巻き起こした投手だからこそ、聞く耳を持つ球児がいるはずだ。

 記者にとってここ数年イースタンでもがく姿が痛々しく映っていた。でも厳しい現実を乗り越え、何かを伝えたかったのかもしれない。

 「マー君に勝った男」がボロボロになりながら、ユニホームを脱ぐ。今はお疲れ様といいたい。(11~12年日本ハム担当 伊藤 幸男)

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2021年10月1日のニュース