【番記者秘話】目の前の1日に野球人生を懸けてきた阪神・桑原の苦闘…「おかえり」の思い込めて書いた記事

[ 2021年9月20日 13:27 ]

引退会見で心境を語る桑原(現場代表)
Photo By 代表撮影

 2年連続で60試合に登板し「最優秀中継ぎ」(17年)のタイトルも獲得した17年からの2年間が桑原謙太朗というプロ野球選手のハイライトかも知れない。ただ、今年で36歳の同い歳の記者にとっては、近年の苦闘からもがき1軍マウンドを目指す姿が胸を打った。

 印象的な言葉がある。19年の春季キャンプ終了後。復活を期すはずの顔は、どこか不安げだった。「試合での力感を考えたらブルペンで1日80球は投げられないとあかん。でも、それができなかった…」。わずか数球で終わることもあるシーズン中の1登板も、疲労度を換算してブルペンでその何倍も投げ込んでいく。ずっとこだわってきた「ルーティン」ができなかった。その年、開幕1軍に食い込みながらもわずか7試合の登板。悪い予感は的中してしまった。

 同年4月の降格とともに、右肘痛との戦いも始まった。手術の選択肢もあったが「もう付き合っていくしかない」と決断。1年、いや、目の前の1日に野球人生を懸ける決意表明に聞こえた。マウンドに立っただけで、1球も投げられずに鳴尾浜のブルペンを後にすることもあった。それでも、ある日には「今日は結構、良かったかな。まあ、ボチボチ頑張る」と少ない言葉に前進を感じ取れることが、記者は嬉しかった。そして、最後には「またあの場所に戻れるように」と言った。

 昨年9月13日の広島戦で513日ぶりの1軍登板を果たし、無失点。甲子園のスタンドと同じ「おかえり」の思いを込めて原稿を書いたのを今でも覚えている。会見では「後悔はないですけど、悔いは多少残った」と穏やかな表情で振り返った。平坦な道のりでなくても、余力を残すことなく、走りきった14年間。クワさん、本当にお疲れさまでした。(阪神担当・遠藤 礼)

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