ヤクルト・村上　清原超え史上最年少100号　本塁打量産の理由と原点の中学時代

セ・リーグ   ヤクルト5―1広島 （ 2021年9月19日    神宮 ）

＜ヤ・広＞初回1死、村上は通算100号となるソロ本塁打を放ち記念のボードを掲げる（撮影・森沢　裕）
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　若き大砲が快挙を達成した。ヤクルト・村上宗隆内野手（21）が19日、広島戦の初回に35号本塁打を放ち、プロ野球303人目の通算100本塁打に到達した。21歳7カ月での到達は、89年清原和博（西武）の21歳9カ月を抜き史上最年少記録。東京五輪では侍ジャパンのチーム最年少で全試合に出場して金メダルに貢献したスラッガーが、チームの優勝争いにも弾みをつけた。

　迷いなく振り切った豪快な一撃で、32年間破られなかった記録の壁を打ち破った。村上は打った瞬間に確信し、右手を上げた。広島の外野陣は動かない。史上最年少100号は、神宮の右翼席中段に届いた。

　「早く打ちたいなと思っていたので、打てて良かったですし、勝ててうれしいです」

　2―0の初回1死、高橋昂の高めカットボールを35号ソロ。プロ初打席初本塁打も放った本拠地で節目の一発だ。「神宮のヤクルトファンの前で打ててうれしい。始まりもこの球場。何か縁があるのかなと思います」。記念ボードを掲げ、祝福するファンに向かって何度も頭を下げた。

　プロ1号を記録した18年9月16日から3年と3日。積み上げてきた100本のうち、左中間、左翼方向に放った本塁打は35。逆方向にも長打を打てるのが、量産できる最大の理由だ。原点は中学時代にある。熊本東リトルシニアで「左中間に打て」と徹底された。逆方向への打撃を重視する指導方針であるとともに、引っ張ると右翼にある小屋の屋根を破壊してしまうからだ。

　グラウンドは右翼が約80メートルと狭かった。村上は身長が1メートル80近くに急成長した中学2年から柵越えを連発。高さ約12メートルのネットを軽々越えるようになった。その先にある小屋の屋根を何度も直撃。中堅方向では100メートル先にある民家の屋根にダイレクトでぶつけたこともある。破壊阻止のため、ティー打撃で逆方向への打撃を徹底的に反復した。マシン打撃では約12メートルまで近づき体感速度を上げ、スイングスピードに磨きをかけた。

　高校通算52本塁打の強打者に成長した逸材はプロ入り後、伸び伸び育てられた。プロ1年目に2軍監督だった高津監督は「あまり叱ったことがない。思い切ってプレーさせることしかなかった」。持ち味のフルスイングを伸ばすために2軍では「三振OK」の方針が打ち出され「将来の4番を」という首脳陣の期待を背負った。2年目に1軍全試合に出場もリーグ最多の184三振。実力不足を痛感し人知れず涙を流したこともあった。悔しさをバネに36本塁打でブレーク。球界屈指の左の長距離砲になった。

　歴代最多868本塁打の王貞治より速いペースだが「まだ肩を並べられるほど実績はない」と表情を引き締めた。チームは3連勝で首位・阪神とのゲーム差は1・5に縮まった。「優勝できるように頑張ります」。背番号55が、そのバットでVへの道を切り開く。（青森　正宣）

　【村上100号アラカルト】☆最年少　村上（ヤ）が19日広島戦の初回に高橋昂から右翼に今季35号を放ち、通算100本塁打を達成した。プロ野球303人目。初本塁打は18年9月16日広島戦で岡田から。21歳7カ月での達成は89年6月4日ダイエー戦の清原和博（西）の21歳9カ月を32年ぶりに更新する史上最年少記録となった。

　☆日本人左打者最速　100号の歴代最速記録は90年ブライアント（近鉄）の246試合。村上の379試合は歴代23位だが、日本人では19年山川（西）の321試合を筆頭に4位。左打者に限ると97年松井秀喜（巨）、02年松中信彦（ダイエー）の468試合を抜く最速だ。

　☆高卒4年目は3人目　4年目での達成は日本人最速タイ。01年高橋由伸（巨）以来9人目で、高卒では55年中西太（西鉄）、89年清原に次ぎ3人目。なお、最速は02年カブレラ（西）の2年目。

　◇村上　宗隆（むらかみ・むねたか）2000年（平12）2月2日生まれ、熊本県出身の21歳。九州学院では1年夏に4番として甲子園に出場し、高校通算52本塁打。17年ドラフト1位でヤクルト入団。プロ入り後に捕手から内野手に転向した。19年は36本塁打で高卒2年目以内シーズンでは53年の西鉄・中西太に並ぶ最多本塁打で新人王に輝き、昨季は最高出塁率（・427）のタイトルを獲得。1メートル88、97キロ。右投げ左打ち。

　▼ヤクルト・高津監督　入ってきた時からずっと見ていますけれど、決して不思議ではなく、まだまだ本当に通過点。本当の4番に成長していかないといけないし、成長させなきゃいけない。