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【内田雅也の追球】優勝を目指す阪神に求められる「決勝戦」の気持ち 明日なき戦いの球児に学ぶ敢闘

[ 2021年8月29日 08:00 ]

セ・リーグ   阪神6ー7広島 ( 2021年8月28日    マツダ )

<広・神>4回、中野の犠飛で生還し、ナインとタッチする阪神・糸井(撮影・成瀬 徹) 
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 大阪・江戸堀の日本高校野球連盟(高野連)のある建物は「中沢佐伯野球会館」という。高野連2代目会長・中沢良夫と3代目会長・佐伯達夫の名を冠している。

 この日は中沢の命日だった。1966(昭和41)年、82歳で没した。

 連盟に中沢の書簡が残っている。64年、京大工学部同期会の席上、姫路南高校長に書いて渡したものらしい。

 「野球仕合(しあい)、一戦毎(ごと)に最後の優勝戦と心得、常に熱意を以(もっ)て戦ひ、終始死守敢闘すべし」

 これが高校野球に根づく精神だろう。全国幾千の高校が壮大なトーナメント戦を戦う。負けたら終わりの必死さがある。

 雨で大幅に日程が長引いた夏の甲子園大会はきょう29日、決勝を迎える。今年も終盤の同点や逆転など、劇的な試合が多く見られた。あれは常に「最後の優勝戦」と臨む覚悟のあらわれだろう。

 プロはどうか。長丁場のシーズンで当然、戦い方は変わる。負けても明日があるのだ。

 それでも――と言ったのは栗山英樹だった。日本ハム監督就任1年目の2012年5月17日、セ・パ交流戦で初めて甲子園入りした際、選手たちを集め「甲子園に恥じない試合をやろう」と呼びかけた。「プロは毎日試合があるから……というのは甘えだと思う。全試合、甲子園決勝戦のつもりで戦うことはできる」

 優勝を目指す阪神の選手たちは、そんな高校球児のような不屈の敢闘姿勢が問われている。

 この夜、1点差で敗れはしたが、姿勢は見えたと書いておきたい。序盤の4点ビハインドを追いかけ、食い下がった。たとえば40歳の糸井嘉男は代打の4回表無死一塁、そして6回表先頭で安打し反撃の口火を切った。

 打撃不振の4番・大山悠輔を先発メンバーから外して臨んだ試合。こんどは5番の佐藤輝明も代打を送らねばならぬほど不振に陥っている。苦しい陣容のなか、戦っているのだ。結果が問われる勝負の世界だが、この夜見えた敢闘の心はたたえられていい。

 数年前まで毎年のようにシーズン終盤に失速していた。当時の監督・和田豊が「心のスタミナが足りなかった」と話したのを覚えている。そう、心の問題なのだ。

 マツダスタジアムにも赤とんぼが舞う晩夏である。もうすぐ優勝争いの「セプテンバー・ヒート」(熱い9月)を迎える。「毎試合、最後の決勝」の気概で臨む心がほしい。 =敬称略= (編集委員)

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