左打席だけじゃない! 阪神・ロハスが見せたスイッチヒッターの意地

[ 2021年8月19日 08:00 ]

セ・リーグ   阪神5-2DeNA ( 2021年8月18日    東京D )

<D・神17>8回、押し出し死球を食らうロハス(撮影・島崎忠彦)
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 【畑野理之の理論】ものすごい当たりだった。2回先頭でロハス・ジュニアが右中間へ先制の2号ソロ。大貫晋一の低めチェンジアップを低い弾道で運んだ。バットにさえ当たれば、スタンドまで軽々と持って行くパワーを改めて知った。

 スイッチヒッターだが、ずっと左打席で起用すればいいのに…と思っていた。左打席はこの試合の3打数1安打を入れてもまだ47打数9安打の打率・191だが、それでも右打席の22打数1安打、同・045と比較すれば期待値には雲泥の差がある。右打席では7月2日の広島戦で玉村昇悟から中前打を放っただけ。当然だが、2本塁打はいずれも左打席だ。

 韓国・KTでは4年連続で打率3割以上をマークし、通算・321、132本塁打と最強助っ人の一人に挙げられていた。しかし、やはり韓国球界でも右打席の方が弱いと評価されており、ピンチでは左投手にスイッチして右打席に立たせて勝負した球団もあったと伝わる。

 昨年12月にロハスとの契約が締結した直後、矢野燿大監督も球団編成部からの報告と自身が映像で確認した印象としてこう話している。「左打席の方がいいかな。どのコースにも合わせられる。打ってる形を見ても技術的には左の方が高いように見える」。その評価は今も変わっていないだろう。ジェリー・サンズもジェフリー・マルテも右打ちなので、バランスもよくなる。

 ただ、ロハスも左打席専門でヨシとはしないだろう。両打ちがストロングポイントの一つだとの自負もある。思い出したのが西岡剛がスイッチヒッターとしてのプライドをにじませていたことだ。もともと左打ちだったがプロの世界で生き残っていくために血のにじむ努力で右打席でも打てるようにし、2010年には両打ちでは最多の年間210安打を放った。相手投手の右左に関係ないのが西岡剛のこだわりであり、その結果が日米通算1241安打なのだという。

 ロハスは8回、2―2に追いつきなお無死満塁でエドウィン・エスコバーから右打席で決勝の押し出し死球をもぎとっていた。2ストライクと追い込まれてからバットを短くもっての6球目だった。安打ではなかったが、この粘りと意地に、試合後は右打席でも少し期待してみたくなった。(専門委員)

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