秋田商・高橋 天国の父に贈る完投&一発…6年ぶり聖地へ「麻の糸のように強い」活躍誓う

[ 2021年7月14日 05:30 ]

第103回全国高校野球選手権秋田大会2回戦   秋田商5ー3秋田修英 ( 2021年7月13日    大曲 )

<秋田修英・秋田商>3失点で完投勝利を挙げた高橋(撮影・河野 光希)
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 第103回全国高校野球選手権(8月9日から17日間、甲子園)の地方大会は13日、36大会で計231試合が行われた。秋田大会では6年ぶりの甲子園出場を目指す秋田商の高橋入麻(いるま)投手(3年)が秋田修英との2回戦で3失点完投。本塁打も放つ活躍を演じた。神奈川大会では甲子園春夏連覇を狙う東海大相模と3年ぶりの夏の頂点を目指す横浜がともに5回コールド発進。14日は34大会で計210試合が行われる。

 大会2週間前だった。寮生活の高橋は大仙市の実家にエースナンバーを持ち帰り、仏壇に供えた。父・健良(けんりょう)さんは4歳の時に交通事故で亡くなった。遺影の中でほほ笑む父。母・ともみさん(46)は思いを込めて背番号1をユニホームに縫いつけ「勝てるように見守ってください」と祈った。

 最速143キロを誇る右腕は、雨天順延による1日遅れで夏の初戦を迎えた。エンゼルス・大谷のように「2番・投手」で出場し、1―0の3回に高校通算20号となる右越えソロ。両翼100メートルと広い大曲球場で父が眠る大仙市の空にアーチをかけた。投げても最速140キロを計測して3失点で完投。ゲームセットの瞬間、母は一塁側のスタンドで涙した。

 130球を投げ抜いた高橋は校歌を聴いた後、熱中症で医務室に運ばれた。試合後の会見は座ったまま行い「初戦で緊張した。後半は体力がなくてまだまだだなと思った。みんなに支えられて勝てた」と仲間に感謝した。

 名前の入麻(いるま)は「麻の糸のように強く、良いことがたくさん入ってくるように」と父がつけた。物心つく前の保育園児は実家近くにあるお墓に通い、二度と会えないことを悟った。小学3年から始めた野球。高橋は「自分の生きる道」と言う。厳しく熱い指導者たちが父親代わりだった。たくましく成長するにつれ、青森山田で野球をしていた父に似た。右投げ左打ち。投手兼外野手まで同じだ。スタンドで見守った祖父の晃治さん(77)は「息子(健良さん)にそっくり。体格もしぐさも重なるよ」と思いをはせた。

 「母子家庭で育ったので、絶対に母を甲子園に連れていって恩返ししたい」と高橋。「麻の糸のように強く」。父の願った姿で天国に白星を届けた。秋田商にとって6年ぶりの夏の甲子園も必ずつかむ。(柳内 遼平)

 ◇高橋 入麻(たかはし・いるま)2003年(平15)5月26日生まれ、秋田県大仙市出身の18歳。小3から野球を始め、仙北中では軟式野球部に所属。秋田商では1年春からベンチ入りし、今春から背番号1。遠投105メートル。50メートル走6秒1。1学年下の妹と2人きょうだい。1メートル74、72キロ。右投げ左打ち。

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2021年7月14日のニュース