元広島の前田智徳氏次男・晃宏、慶応救った不屈の好救援 大会直前に右膝前十字じん帯損傷

[ 2021年7月13日 05:30 ]

全国高校野球選手権神奈川大会1回戦   慶応5-4桐蔭学園 ( 2021年7月12日    保土ケ谷 )

<桐蔭学園・慶応>5回2死満塁、桐蔭学園・小林を空振り三振に仕留めガッツポーズの慶応・前田(撮影・島崎忠彦)
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 第103回全国高校野球選手権(8月9日から17日間、甲子園)の地方大会は12日、36大会で計223試合が行われた。神奈川大会ではともに夏の全国優勝経験のある慶応と桐蔭学園が1回戦で激突。元広島の前田智徳氏(50)の次男・晃宏投手(3年)が好救援を見せた慶応が5―4で競り勝った。埼玉大会では初の甲子園出場を狙う昌平が飯能南を8―1で下し3回戦進出。13日は36大会で計247試合が行われる。

 ピンチの芽を摘むイメージは事前にできていた。逆転を許した直後の5回2死二、三塁。慶応のエースナンバーを背負う前田がマウンドに上がった。「こういう展開になるのは分かっていた。ピンチで投げて、という練習をしてきた」。四球で満塁としたが最後は7番・小林啓剛を空振り三振に斬り、吠えた。

 6月28日。練習試合での挟殺プレー中に右膝を痛めた。前十字じん帯の断裂と半月板の損傷という重傷。「(夏が)終わったと思った。何でケガをするんだという怒りと絶望があった」と振り返る。

 一生に一度しかない夏。諦めず、できる限りのことをやった。酸素カプセル、超音波治療…。グラウンドにも顔を出し「指先の感覚を忘れないように」と座りながらネットスローを繰り返した。森林貴彦監督との話し合いで「3イニング、50球程度」の制限を設けて救援待機。テーピングを施したが、全力投球はできない。それでも得意のチェンジアップを効果的に投じ、8回まで3回1/3を5安打2失点、6奪三振と力投した。

 父は広島で活躍し通算2119安打を放った智徳氏。体を心配する父からは「スライディングだけはするな」と忠告されていた。その父もスタンドで見守る中、一塁走者だった7回に送りバントでセーフとなるために二塁ベースに足から滑り込み相手の失策を誘った。「危ないと思った」と冷静さも失わず、その後はヘッドスライディングに切り替えた。

 昨秋県大会3回戦で1―6で敗れた桐蔭学園とは、その後の2度の練習試合も大敗していた。先発した左腕・荒井駿也(3年)が最終回に再び登板。無失点で締めマウンドで泣いた。森林監督も「一生、(思い出に)残る試合」と涙した。

 「この夏は誰よりも輝き、誰よりもはしゃぎたい」と前田。狙うはノーシードからの頂点。一丸で突き進む。(川島 毅洋)

 ◇前田 晃宏(まえだ・あきひろ)2003年(平15)8月18日生まれ、東京都出身の17歳。小1から世田谷インディアンズで野球を始める。広島・牛田中では広島ボーイズに所属。慶応では1年秋からベンチ入りし2年秋からエース。50メートル6秒0。1メートル76、74キロ。右投げ右打ち。

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