阪神・中野、初球二盗の勇気が呼んだ先制点 あの赤星氏も語る「ひるまず走ることの難しさ」

[ 2021年6月14日 08:00 ]

交流戦   阪神6ー5楽天 ( 2021年6月13日    楽天生命パーク )

<楽・神(3)>3回2死二塁、マルテの適時打で生還した中野はナインとエアタッチをかわす(撮影・大森 寛明)
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 【畑野理之 理論】大したものだ。3回2死から中野拓夢がチーム初安打となる左前打。次打者ジェフリー・マルテの打席で13個目の二盗を決め左前打で生還するという効果絶大の走塁となった。この試合の勝因となる4度あった2死走者無しからの最初の先制点を演出した。

 12日の5回2死一、三塁で二塁タッチアウトとなっていた。1日前のプロ初の盗塁失敗にひるむことなく、初球からすばらしいスタートを切っていた。「初球からいける準備をしていました」。早川隆久とはプロ初対戦だが、映像や情報などでしっかりと研究していたのだろう。

 5度のタイトルを獲得した通算381盗塁の赤星憲広(本紙評論家)から、何度も聞いた。「足にはスランプがないって言われるが、絶対にあります」。盗塁に必要なのはスタート、スピード、スライディングの『3S』だとし、しかし、もっとも大事なのは『勇気』だ――と。アウトになることを恐れすぎたらスタートを切れなくなるのだ、と。その意味では中野は一度の失敗くらいではまだまだ走る勇気を失うことはなかったようだ。

 初球で決めたのは、5月7日のDeNA戦の3回に先頭で左前打し、打者チェンのとき以来、2度目。ちなみに2球目は4度、3球目は2度で、この3球目までに8度(62%)もある。実は赤星氏が自身の記録で胸を張るポイントの一つが早いカウントの内に走ることだった。

 計381盗塁の内訳が
1球目…140(37%)
2球目…100(26%)
3球目…60(16%)
4球目…41(11%)
5球目以降…40(10%)

 3球目までが79%と高い。理想は1球目で走ることで、待ってもらっている打者がストライクカウントで追い込まれないよう助けてあげることが信頼関係になる。スタートが切りづらい投手の時は打者に走らないサインを送っていたという。

 中野は5月8日の日本ハム戦で再び打順2番を奪い返すと、そこから6試合で6個のハイペースでついにリーグ単独トップに立った。自身の出塁や相手バッテリーなどの状況もあるが、次打者が投手だった打順8番のときよりも量産態勢に入った背景には3番マルテとの意思疎通が構築されつつあるのではないだろうか。近本光司が12個で同2位で追う。今回の6連勝には、この1、2番コンビもかなり貢献しているのは間違いない。=敬称略=(専門委員)

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2021年6月14日のニュース