【内田雅也の追球】防戦成功を示す「残塁12」 苦しい勝利の阪神 「鏡」を見つめる時

[ 2021年6月9日 08:00 ]

交流戦   阪神3-2日本ハム ( 2021年6月8日    札幌D )

<日・神(1)>7回裏2死三塁、渡辺(右)を空振り三振に仕留めガッツポーズする梅野(撮影・椎名 航)
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 9回表2死、代打・原口文仁の二塁打で決勝点を奪った阪神だが、それまでは防戦一方だった。

 1回表の2点はいずれも相手拙守でもらった点だった。好調時ならば無死満塁から適時打を連ね、ビッグイニングにしていたことだろう。打線低調は明らかで、苦しい展開だった。

 2回裏を除き毎回走者を背負った。9安打を浴び、5四死球を与えた。それでも2失点で持ちこたえた投手陣、守備陣はたたえられていい。日本ハム拙攻を示す12残塁は、阪神防戦成功の数字だと受けとめたい。

 3回裏は2死二、三塁で中前に抜けようかというゴロを中野拓夢が広い守備範囲で救った。同点とされた後、7回裏は藤浪晋太郎、8回裏は馬場皐輔が得点圏に走者を背追いながら踏ん張った。回の最後の打者はともに空振り三振だった。無失点でしのいだ瞬間、捕手・梅野隆太郎が握った右こぶしに、配球の苦労と勝利への執念を見た。

 打てない時は守るのだ。辛抱する。苦しんだ先に喜びが待っていることを知っている。殊勲者の原口はそんな梅野の代打だった。同じ捕手同士。ライバルだが、勝利への思いは相通じている。

 梅野は8回まで150球、9回裏は坂本誠志郎が24球、計174球を費やしての防戦だった。

 試合後、選手たちの笑みがはじけた。いや笑顔は試合中もあった。テレビ中継の画面に、いい顔が映し出されていた。

 監督・矢野燿大はこれまで「楽しむから力を発揮できる」「笑うことにパワーがある」「苦しい時こそ笑って」と繰り返してきた。

 矢野も交流があるコピーライター・作家、ひすいこたろうは『3秒でハッピーになる名言セラピー 英語でしあわせ編』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)で、幸せになる方法として笑顔をあげている。

 <ではここで、鏡の前に行って、ニッコリ笑って鏡をのぞいてみてください。誰が映って見えますか?><その鏡に映っている人こそ、あなたの人生を変えてくれる人物です>。

 そう、変えるのは自分なのだ。同書はマイケル・ジャクソンの代表曲『マン・イン・ザ・ミラー』の歌詞を引用する。

 <鏡の中の男に呼びかけるんだ 生き方を改めようと (中略) 世の中を良くしたいなら 自分を見つめて 変わることさ>

 多くを守備に費やした4時間12分の長時間試合だった。苦しんで苦しんで勝つことができた今こそ変わる時だ。チームとして、再び気運を高め、復調したい。誰かが変えるのではない。自分で変わるのだ。

 札幌の夜、汗を流した後、ゆっくり鏡を見つめたい。もちろん、笑って眺めたい。 =敬称略= (編集委員)

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