ただの大敗で終わらせなかった佐藤輝の一発 日曜日初黒星でも、終盤の虎が残した「爪跡」の意味は大きい

[ 2021年6月7日 08:00 ]

交流戦   阪神3ー8ソフトバンク ( 2021年6月6日    甲子園 )

<神・ソ>9回、阪神・佐藤輝は右中間に本塁打を放つ
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 【畑野理之 理論】9回に佐藤輝明が15号ソロを放って甲子園スタンドは盛り上がった。序盤から一方的にやられて今季ワーストに近い完敗モードだったが、ひと振りで吹き飛ばし、8413人ファンを少しでも“きょう来て良かった”と喜ばせて帰路につかせるのだから、やっぱりプロフェッショナルだ。

 先発の和田毅には3打席連続三振と、まったくいいところがなかった。しかもバットに当てたのは7回の2球目スライダーをファウルにした一度のみ。真っすぐもカーブもチェンジアップも空振り、空振り、空振り…。和田は試合後のテレビインタビューで「裏をかくことができた。拓也(甲斐)のリードのおかげ」と謙遜していたが、松坂世代のレジェンドに翻弄(ほんろう)されたという表現があてはまる。

 3三振の後のホームランが怪物くんらしくて、いい。5月28日の西武戦での球団新人初の1試合3発も、あとの2打席はいずれも三振だった。ブンブン振って、当たればホームラン――。野球アニメに出てきそうなキャラがファンから支持を集める理由の一つだろう。

 4日のソフトバンク戦を本紙評論家の関本賢太郎と一緒に見た。「ここまでスランプってあった? キャンプ初日から、ずっと成長を続けているような気がする。開幕から2カ月以上が過ぎて初体験の新人選手は絶対に体はしんどいはずなのに…」。おそらく佐藤輝本人はバットが重く感じたり疲れがあったりしているのかもしれないが、結果はコンスタントに出ている。本塁打も5月7日のDeNA戦で10号に到達してから12試合に無かったが、先述した28日の西武戦で突然3本。この日のように和田から3三振の後、泉圭輔に代わったとたんに特大弾…など、好不調が本当にわかりづらい選手だ。

 7日は、今年10試合目で初めての日曜日敗戦で迎える、試合のない月曜日。矢野燿大監督はかねて「勝って迎えるのか、負けて迎えるのかはその一日が気分的に大きく違う」と話している。しかも4月27日、28日の中日戦以来となる2連敗と悪い事象が並ぶ。しかし8回の原口文仁のヘッドスライディングでの三塁打や、ジェフリー・マルテの11号2ランからのラパンパラ、そして佐藤輝のZパフォーマンス…とゲームセットまでチームは集中していた。スコアだけをみれば少しの抵抗にすぎないが、大敗のまま終わらなかった意味は決して小さくはないと思う。
=敬称略=
 (専門委員)

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2021年6月7日のニュース