【内田雅也の追球】実りの秋へ、課題見つめる麦秋の敗戦 阪神、救援陣再整備にバント、ヒットエンドラン

[ 2021年6月4日 08:00 ]

交流戦   阪神3-7オリックス ( 2021年6月4日    甲子園 )

<神・オ(3)>7回無死一塁、阪神・熊谷は送りバントを失敗する (撮影・後藤 大輝)
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 阪神・岩崎優の疲労が心配である。今回の3連戦で3連投し2敗を喫した。チーム最多27試合目登板のセットアッパーで開幕からチームを支えてきたが、救援陣の再整備は課題だろう。

 シーズンは長い。51試合を終え、143試合で3分の1を過ぎたところだ。5月14日以降、相撲用語で言う「ヌケヌケ」で、14試合にわたって勝ち負け……を繰り返している。故障者も出るなか連勝はできないが、連敗しないのは強みだととらえたい。目の前の課題を見つめ、腰を据えたい。

 季節はいま、七十二候の麦秋至(むぎのときいたる)。監督・小津安二郎の映画『麦秋』では紀子(原節子)が幼なじみの兄の同級生と結婚を決める。友人のアヤ(淡島千景)に「どうしてそんな気になったの?」と問われ、答える。

 「ほら、洋裁なんかしてて、ハサミどこに置いたかと思って、方々探して目の前にあることがあるじゃないの」「つまり、あれね。あんまり近すぎて、あの人に気がつかなかったのよ」

 阪神は近年、救援陣の登板管理に優れていた。細心の注意を払い、登板過多にならない起用を続けてきている。

 岩崎の代わりはなかなかいないが、休ませながら新たな投手の登用も考えているかもしれない。紀子が気づいたように、灯台もと暗しで、抜てきに応えられる投手はすでに目の前にいるのかもしれない。

 先発で7回3失点と試合をつくったラウル・アルカンタラは、前回登板時も書いたように、走者を背負った時が課題である。ノーワインドアップで投げる無走者時に比べ、セットポジションでは球威は落ち、制球は甘くなる。

 顕著なのは走者一塁時である。この夜は走者一塁で6打数3安打、通算3試合で12打数6安打と苦手にしている。

 盗塁、ヒットエンドランなど足を警戒し、クイック投法が求められる。この夜の投球タイムは手もとの計測で1秒15~38だった。計16球投げ、合格点とされる1秒20を切った球は4球だった。

 4回表は吉田正尚に二塁打され2失点につながった。6回表は杉本裕太郎、7回表は福田周平に安打されピンチを招いたが、何とか後続を断ってしのいだ。走者二塁以降は足を大きく上げて投げ、球威も戻っていた。開き直ったのだろう。

 攻撃面で細かなミスもあった。4回裏1死一塁でのヒットエンドランで中野拓夢が空振りし走者を憤死させた。7回裏無死一塁では代打・熊谷敬宥が送りバントを失敗した。作戦遂行の難しさは分かるが、やるべきことをやれるようになれば、勝利はついてくる。これもまた課題としたい。

 秋を「とき」と読むのは収穫で重要な時だからだ。麦秋のいま、本当の実りの秋を思い、足もとを見つめたい敗戦である。 =敬称略= (編集委員)

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2021年6月4日のニュース