阪神・中野の遊撃“レギュラー”への道は試合終了まで守り切ること

[ 2021年5月17日 08:00 ]

セ・リーグ   阪神6-5巨人 ( 2021年5月16日    東京D )

<巨・神>3回無死、阪神・中野は右前打を放つ(撮影・大森 寛明)
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 【畑野理之の理論】2点を先制された直後の3回先頭で中野拓夢は右前打を放ち、同点劇の足がかりをつくった。4回には陽川尚将の決勝2ランのあとに遊撃への内野安打で出塁し、リードをさらに広げる生還を果たしている。守備でも5回の香月一也の中前に抜けようかというゴロに対するポジショニングも素晴らしかった。中野が遊撃の定位置を奪い取ったのだと、確信した。

 ひょっとしたら、この日は先発出場ではないのかも…と思っていた。前日15日の巨人戦もノーヒットで、8日のDeNA戦6回の四球から20打席無安打が続き、打率も初めて3割を切っていた(・298)。この日の相手先発は左腕の今村信貴。それでも右打ちの山本泰寛ではなく、13試合連続スタメンだった。

 何をいまさら、以前からもうレギュラーだったじゃないかと指摘を受けそうだが、この間、「1番手」であっても「レギュラー」ではなかった。なぜなら9日のDeNA戦では3―2で1点リードの9回の守備でベンチに下がり木浪聖也が1イニングだけ起用されている。4月29日の中日戦、同30日の広島戦、5月4日と5日のヤクルト戦では試合途中から二塁に回り、やはり木浪が遊撃についている。4月28日の中日戦にいたっては代走から二塁に入り、同じく代走から出場の山本が遊撃についているときもあった。当時の遊撃守備に関しては、守備固めが必要という評価だったということ。春季キャンプでは主に二塁守備を強化していたためとの見方もあるが、ここにきてようやく5試合連続でフル出場している。

 12年から16年途中まで667試合連続フルイニング出場を続けていた鳥谷敬のあと、阪神のショートストップは混とんとしていた。北條史也や木浪らが名乗りを上げたが完全には定着していない。中野にはその期待がかかるし、ならば、いまリーグを代表する巨人の坂本勇人や中日の京田陽太らのようにめったなことでは試合途中に退いてほしくない。現役時代は遊撃手だった広島の元監督・野村謙二郎は「将来レギュラーまで期待する選手はプレッシャーから逃がさない方がいい。1点差とか9回を最後まで守り切ることが大事」と話している。この日の2安打で打率も再び3割(・307)に乗せた。いずれはベストナインやゴールデングラブ賞を彼らと競ってほしい、と願う。=敬称略=(専門委員)

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2021年5月17日のニュース