【新井さんが行く!】伝統をも背負う大山こそが虎の4番

[ 2021年5月7日 05:30 ]

新井貴浩氏
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 来週は阪神―中日、阪神―巨人がそれぞれ通算2000試合に到達する、と聞いた。普段は意識することの少ない歴史の重みを再認識し、かみしめる機会になる。

 7年間を過ごした阪神時代。最も多かったのが中日戦の147試合で、次いで巨人戦の146試合だった。08年に腰椎骨折から復帰した9月下旬、甲子園の大歓声に身震いしたのも、巨人戦だった。長い歴史の中では、ほんの1ページにもならないかもしれないが、そこに自分もいた。1人でできることではない。たくさんの人たちの営みの中で生かされている…と改めて感じる。

 「2000」という数字の間には大変な時代もあった。志半ばで戦死された先輩方もいる。野球をやりたくてもできなかった。困難な時間を生きてきた先人たちがいて、いまがある。感謝、敬意を忘れてはいけない。何も野球だけに限らないと思う。両親の世代も懸命に働き、社会を築いてきた。頭が下がる思いで、感謝は尽きない。

 選手としてユニホームを着ている時間は、長いようで短い。いま現役の人たちは一試合一試合、一瞬一瞬を大切に過ごしてくれたら…と思う。いまは再び困難な状況にあるかもしれない。ファンのいない球場もある。その中でも1試合ずつの積み重ねが続いていく。乗り越え、受け継いできたものを次の世代へつなぐ役割が、自分も含めてあると思う。

 阪神にいた頃は中日、巨人と毎年のように優勝を争ってきた。過渡期をへた中日は根尾ら若い選手が台頭し始め、新しい時代の入り口にいる。阪神も若返り、活発だ。巨人に対抗してきた長い歴史も思いながら、今季の戦いを見ていきたい。

 離脱した大山は責任感が強く、焦る気持ちもあるかもしれないが、しっかり治してほしい。一時的に代わりに誰が4番に入っても、大山が阪神の4番打者であることは変わらない。新人の佐藤輝が開幕から思い切ってやれたのも、中心に大山がいたから…。いま時点の期待だけでなく、伝統も背負う重責。大山が、いまの4番だ。(スポニチ本紙評論家)

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