【内田雅也の追球】「真綿で首」の選球で攻略した阪神打線 光った2ストライク後の見極め

[ 2021年5月1日 08:00 ]

セ・リーグ   阪神4-2広島 ( 2021年4月30日    甲子園 )

<神・広(6)>初回2死二塁、大山は四球を選ぶ(撮影・坂田 高浩)
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 阪神が「目」で広島先発の九里亜蓮を攻略した。選球眼である。

 象徴的だったのは1回裏だ。糸原健斗、大山悠輔が追い込まれた後の際どい球を見極めて四球を選び、2死一、二塁を築いた。ジェリー・サンズも追い込まれた後に左前適時打したのだ。

 2ストライク後の打撃成績(29日現在)をみると、規定打席到達26人のうち、糸原は打率・304で巨人・坂本勇人・300やDeNA・佐野恵太・298らをしのぎ、セ・リーグ最高である。追い込まれても対応できる自信があるのだろう。この夜の5打席がそうだったように、初球や第1ストライクはほとんど振らない。じっと選んで待ち、最後に仕留める。そんな姿勢が高打率、高出塁率を支えている。

 一方、サンズは2ストライク後打率・114で最下位だった。だが、この1回裏は0ボール2ストライクから外角ナックルカーブ、内角シュートを見極めたため、高く浮いたフォークを快打できた。選球の重要性を知ったことだろう。

 2回裏は2死一、二塁から糸原が得意の2ストライク後に右前適時打した。5回裏もサンズ2ストライク後の四球でつなぎ、佐藤輝明が右前適時打した。この佐藤輝も2ボール1ストライク後のチェンジアップを見極めたため、ストライクを取りに来たツーシームを打てたのである。

 当たりはよくなかったが、無死一、二塁で右方向に引っ張ろうとしていたため、ゴロが一、二塁間を抜けていった。選球といい、打撃姿勢といい、大物新人の成長を見た打席となった。

 こうして阪神打線は5回まで毎回8安打、6四球を選んだ。3回裏の申告敬遠以外の5四球はすべて効果的に得点に絡んだ。九里は今季過去5試合で9四球と制球が悪い投手ではない。各打者のボール球を見極める姿勢で苦しめ、109球を投げさせていた。真綿で首を絞めるように攻略したのだった。

 ちなみに、5回まで9残塁と効率的な攻撃が特徴だった今季では珍しい拙攻だった。29日まで2けた残塁がないのは12球団で阪神だけだった。この夜の残塁は結局10で今季初の2けただった。

 甲子園球場では昨年7月9日以来の無観客試合だった。静かな場内のなか、1つボール球を選ぶ度に阪神ベンチから歓声が響いていた。選球をたたえる空気を感じた。

 映画にもなった『マネー・ボール』(マイケル・ルイス著、ランダムハウス講談社)で選球眼を「野球の成功に一番直結する能力」と位置づけている。四球は投手が制球を乱しただけで打者の功績ではないとする<反論>は<間違っている>とあった。選球眼はフロントやコーチの指導、選手の姿勢で身につくのだろう。

 一発長打の本塁打も目立つ今季の阪神だが、この夜はすべて単打の適時打4本で得点を記した。選球や粘り、つながりといった本来の持ち味が出た試合だった。=敬称略=(編集委員)

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