槙原寛己氏 マー君“精密”低め変化球を実現した投球フォームのわずかな「ため」

[ 2021年4月25日 05:30 ]

パ・リーグ   楽天2-1西武 ( 2021年4月24日    楽天生命 )

<楽・西>日本通算100勝を達成し、松井(右)から記念のボードを手渡される田中将(撮影・白鳥 佳樹)
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 【槙原寛己 視点】変化球は低めに集めてこそ意味を持つ。慎重かつ丁寧に、田中将はそれを実践した。ベルト付近の高めの直球をうまく使う右腕だが、この日は徹底して変化球を低めに集めた。そのための小さな工夫が投球フォームにあった。

 前回登板と比べて、左足を上げた際にほんのわずかな「ため」をつくっていた。軸足である右足に少しでも長く体重を乗せるためだが、これが変化球が低めに投げられた要因だ。軸足に体重が乗りきらず、体が前に突っ込むとボールを押し出すような形になり、高めに浮いてしまう。それを防ぐための工夫。田中将はこのフォームで一球一球、慎重かつ丁寧に低めを突いていた。

 直球とスライダー、スプリットの球種の割合はほぼ同じ。変化球の多い投球スタイルは米球界で培ったものだ。この日は直球があまり走らず、シュート回転もしていた。試合前から捕手の太田と話し合って変化球の比率を増やしたのだと思う。低めに集める徹底した意識と、そのために必要な作業。これは経験値の高さがあればこそ可能になる。特に良かったのはスライダー。好調の愛斗を2回に3球三振に仕留めたのもこのボールだ。

 一方で変化球の比率が高かったため、追い込んでから西武打線にスプリットを狙われた。3回の呉念庭(ウーネンティン)の右前適時打、源田の遊撃内野安打はいずれも2ストライク後のスプリット。ただ、これは直球が本来の切れとスピードを取り戻せば解消できる。直球の比率を高め、的を絞らせないところでスプリットを振らせる。それが理想だ。(スポニチ本紙評論家)

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2021年4月25日のニュース