“失敗”から学び、前へ…阪神・佐藤輝にも見えた「切り替える力」

[ 2021年4月25日 09:00 ]

<神・D(5)>初回1死満塁、2点適時打を放ち、筒井コーチ(左)とグータッチをかわす佐藤輝(撮影・北條 貴史)
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 かつてアルバート・アインシュタインは「一度も失敗をしたことがない人は、何も新しいことに挑戦をしたことがない人である」と言葉を残した。大事なのは、失敗の経験から学んだことをどのように生かし、次に歩を進めるか。スポーツに限ったことではなく、全ての人間に当てはまることだと考える。

 24日のDeNA戦(甲子園)で阪神・佐藤輝は2度の満塁機でいずれも適時打を放つなど、ともにプロ初の3安打&4打点と躍動。聖地2度目のお立ち台で「気持ちいいです。絶対ランナーを還す強い気持ちでいきました。昨日の悔しさもあったので打ててよかった」と声を弾ませた。

 “昨日の悔しさ”とは、23日の同戦での右翼守備で打球を後逸した場面を指す。一気に4人を生還させてしまう痛恨のプロ初失策で、2点を追う展開から一気に試合の大勢が決まってしまった。ネット上での暴言や、コロナ下で禁止されているにもかかわらず、球場で聞くに耐えないヤジを飛ばす連中を擁護する気は一切ない。だが阪神・矢野監督が「プロとしては恥ずかしいプレー」と語気を強めた通り、批判は免れないプレーではあった。

 だからこそ一夜明け、大型ルーキーがどのようにやり返すかに注目していた。結果は前述の通り。昨晩のミスを即座に挽回し、男としての意地を示した。1打席目の適時打を「あいつの中でここは何とかしないといけないというようなものがにじみ出ていた」と評したのは井上ヘッドコーチ。いきなり1、2打席目に満塁の好機を引き寄せる“スター性”と、ここぞの場面でしっかり結果を出す集中力と精神力は、並大抵のものではない。

 記者になってまだ間もない2年前の夏、青柳に負けた後どのように気持ちを切り替えているのかと質問し、返された言葉を思い出した。「いくら悔しくても、ウダウダしていても結果は変わらない。鳥谷さん(現ロッテ)にそう言われて気付くことはありました。やっぱり、あれだけ長く続けられている方ですから」。その年初めて開幕ローテーションに入った青柳は6月に3戦連続で5回持たず降板と苦しい時期を過ごし、その際に鳥谷から助言されたという。変則右腕は「切り替える力」を武器に自己最多9勝を挙げ、現在もローテーションの一角として欠かせない戦力になっている。

 佐藤輝も「やってしまったことは返ってこない。日々勉強だと思って、いろんなことを勉強しながらやっていきたい」とお立ち台で宣言した。入場制限がかかろうとも、無観客であろうとも、大器はこの先幾度となく失敗を積み重ね、それを糧にまた大きく成長していく。(記者コラム・阪井 日向)

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2021年4月25日のニュース