阪神・近本 前夜サヨナラ勝ちの“モヤモヤ”一撃で吹き飛ばす 7回には俊足いかしてバント安打

[ 2021年4月5日 05:30 ]

セ・リーグ   阪神3-1中日 ( 2021年4月4日    京セラD )

<神・中>1回無死、近本は右越えに先頭打者弾を放つ(撮影・大森 寛明)
Photo By スポニチ

 待ってました!阪神・近本光司外野手(26)が4日の中日戦の初回に今季1号の先頭打者本塁打。さらに7回には俊足を生かして相手守備の失策を誘うバント安打もマークし、2安打1打点と打線をけん引した。前日はサヨナラ機に代打を送られたが、その悔しさを1打席目から晴らして波に乗った。頼もしき選手会長の躍動で、チームは2連勝で単独首位に返り咲いた。

 心の奥底に悔しさもあったことだろう。それでも近本は割り切って第1打席に立ち、思いを一振りにぶつけた。会心の一撃だった。

 カウント0―2。小笠原が投じた甘いチェンジアップを、思い切り振り抜いた。今季1号の先制ソロは20年9月17日の巨人戦以来、自身5本目の先頭打者弾。胸中に巣くっていた邪念も、一気に振り払ってみせた。

 「うれしいというよりも、ホッとする。気持ち的にも、やっと出たというか、これは難しい感情ですね…」

 開幕からチームで唯一、フルイニング出場を続けてきた。だが前日3日の中日戦では、同点の9回1死二塁で昨年7月16日以来となる代打を送られた。開幕直後に19打席無安打など、いまだ打率1割台の不振が響いた。その用兵を頭では理解。「しょうがない。僕が逆の立場に立った時もそうと思う。悔しいというよりも、そっちの方が大きかった」と客観的に捉え、切り替えて臨んだ打席だった。

 「ランナーを進めることもそうですけど、送った後は一塁まで全力で走ることができたのでよかった」

 打つだけではない。近本の持ち味が凝縮されたのは、2―1の7回無死一塁だ。一塁線への絶妙な送りバントが、俊足を警戒して浮足立った相手守備の乱れを誘った。バント安打にした上、走者を一気に三塁まで進め、続く糸原の適時打をお膳立てした。

 今年のチームスローガンは「挑・超・頂」だが、選手会長も新たな取り組みに「挑」んできた。オフに鹿児島・沖永良部島で行った自主トレでは、トレーニングの一環として、新たにヨガや水泳に着手。ヨガからは腹式呼吸で自律神経を整える術を学び、水泳からは肩周りの柔軟性の向上をえた。野球以外の種目からも進化のヒントを探り、それを野球に応用する――。この創意工夫こそが、近本の最大の武器と言える。

 今カード開始前の時点で26打数2安打、打率・077だったが、この3連戦で11打数4安打(打率・364)と上昇気配。矢野監督も「こういうところから乗っていってもらいたい」と、今後に期待を寄せた。チームは初回に得点すれば今季4戦全勝。不敗神話継続へ、6日からの巨人戦(甲子園)でも、リードオフマンの働きが不可欠だ。(長谷川 凡記)

 《追い込まれても快音》近本(神)がカウント0ボール2ストライクから初回先頭打者本塁打。昨季7月10日DeNA戦でも、同じカウントで大貫から放っている。2リーグ制以降の初回先頭弾は1970本目になるが、カウント0―2からはわずか28本。このうち1人で2本は92年飯田哲也(ヤ)に次ぎ2人目だが、飯田は1本がランニング弾。「0―2から柵越え先頭打者弾2本」は両リーグを通じて近本が初めてだ。

続きを表示

この記事のフォト

2021年4月5日のニュース